神に選ばれなかった者達 後編

誰しも一度は、子供の頃に大人に言われたことがあるだろう?

自分がされて嫌なことを、人にしちゃいけません。

逆に、自分がされて嬉しいことを、人にもしてあげましょう。

そうしたら、いつか自分も同じように、誰かに優しくしてもらえるから。

綺麗事のように聞こえるかもしれないけど、これは世の中で上手く人付き合いをしていく為に、絶対に必要なステータスだ。

誰だって、自分勝手な人とは仲良くしたいと思わない。

親切を仇で返すような人と、関わろうとは思わない。

「このままだと、萌音ちゃんは色んな人に嫌われてしまうよ。『萌音ちゃんは乱暴だから嫌い』って。パパもママも、萌音ちゃんにそうなって欲しくないんだ」

「…」

「萌音ちゃんが本当は素直な良い子だって、皆に知って欲しいんだ。その為には、自分の態度に気をつけなきゃならない。…人を傷つけちゃいけないんだよ」

…かなり、くどくどとした言い方になってしまったけど。

伝えたいことは、全部言った。

紛うことなき本心である。

果たして萌音ちゃんは、分かってくれるだろうか。

…萌音ちゃんの返事はと言うと。

「…。…は…」

…は?

「はぁぁぁ〜…」

「…!?」

何だか、内臓を吐き出しそうな勢いの、大きな溜め息なんだけど。

何?何か気に障った?

何も分かってない馬鹿め、みたいな?

慌てて、萌音ちゃんの方を見ると。

…萌音ちゃんは、何故かくるくると頭を回していた。

「だ…。…大丈夫…?」

「…はにゃひれほれ〜…」

「…何語…?」

ごめん。ちょっと何言ってるのか分からなかった。

誰か。誰かこの子の言ってることを翻訳してくれ。

盛大にパニックを起こしていると。

「…うーん…。難しい…」

「え…?」

「難しいこと言うんだもん…」

…あ、人語喋ってくれた…。

「難しい…難しい、かな…?萌音ちゃんには…」

「人だから駄目なの?人を叩いちゃ駄目なの?」

え、人?

「人って言うか…まぁ、人だね…」

「でも、バケモノが人な時があるんだよ」

「…はい?」

「バケモノは話しても分かってくれないよ。殺さなきゃ。殺さなきゃ、萌音が殺される」

…??

話が、ちょっと、見えない。

「痛いのが駄目なんでしょ?知ってるよ…。萌音だって、自分が痛い思いするの嫌だよ」

「そ…そうでしょ?皆だってそうなんだよ。だから、人に痛いことをしたら駄目って、」

「でも殺さなきゃ、萌音が殺されるんだもん。相手を痛い思いさせないと、萌音が痛い思いするんだもん。だから殺さなきゃ」

こっ…。

殺す、なんて…軽々しく、そんな言葉を使っちゃいけない。

なのにこの子は、何でこんなに平然としてるんだ?