神に選ばれなかった者達 後編

その後、萌音ちゃんはすぐに寝ちゃって。

それは安心した。

良かった、ちゃんと眠れてるんだ、って。

環境の変化によるストレスが、睡眠にも悪影響を及ぼしているんじゃないかって、それも心配だったのだ。

その無邪気な寝顔は、何処にでもいる女の子と全く変わりなかった。

…まさか、眠っている間に、彼女が別の世界で苦しんでいるなんて…思ってもみなかった。





…翌朝。

昼間に見たものが随分強烈だったせいか、俺はなかなか眠れなかったのだが。

それでも、明け方近くになって、少しくらい眠っていたらしい。

目を覚ますと、萌音ちゃんが上半身を起こして、ぽやんと壁を見つめていた。

…あぁ、もう朝なのか。

「萌音ちゃん…。…早起きだね、おはよう」

「…」

俺が声を掛けると、萌音ちゃんはくるっと振り向いた。

…そういえば、この家に来てからというもの。

萌音ちゃんは、一度も寝坊をしたことがない。

これって、とても良いことなのでは?

他の子は、中学生や高校生になっても、「まだ起きたくなーい」病を発症して。

中には、部屋に入って毛布を引っ剥がして、窓を全開にしておかないと起きない、という熟練のツワモノもいる。

それに反して、萌音ちゃんは我が家に来てからというもの、一度も「起きなさい」と言った試しがない。

朝、素直に起きてくれるというだけで、親としては大変有り難い。

「萌音ちゃんは毎日早起きしてくれて、助かるよ」

だから俺は、素直にそのことを褒めた。

ついつい、萌音ちゃんの悪いところばかりを見てしまいがちだけど。

どんな子にだって、どんな些細なことだって、良いところはあるもの。

まずは良いところをしっかり褒めて、自信をつけてあげることが大事。

欠点は欠点として注意するけど、それは長所を褒めないという理由にはならない。

「まだ一年生なのに、早起きの習慣がちゃんと出来てて偉いね」

規則正しい生活は、とても大切。

笑顔でそう褒めてあげると、萌音ちゃんは相変わらず、ぽやんとしていたが…。

「…ちっちゃいバケモノは?」

「…は?」

萌音ちゃんは、予想外の言葉を口にした。

おはようでも、褒めてくれてありがとうでもなく。

…ち、ちっちゃい…何だって?

「さっきまで、居たの。ちっちゃいバケモノ…。変な声で笑って…噛みついて…」

「え、えっと…?」

「凄く痛かったんだよ。でも、声が…いつもの声が、萌音を助けてくれて…」

「…」

…えっと。

それ、一体何の話?