神に選ばれなかった者達 後編

さて、家に帰ってから、ママと話し合って。

今夜から、萌音ちゃんとママと俺と、親子3人で寝ようという話になった。

何で寝場所を変えるのか、と言うと…まぁ、子供部屋に置いておくと、また余計なトラブルが起きるかもしれないし。

それに、物理的に距離を近くにすることで、少しでも萌音ちゃんとの距離を縮めたかった。

大丈夫だよ、怖がらなくて良いんだよ…ってことを、教えてあげたかった。

…しかし、その試みは初日で失敗した。

というのも、我が家で一番小さな赤ん坊が、ママと離れて寝ることを嫌がって。

泣きじゃくって大変だったので、ママだけは赤ん坊と、別室で寝ることになった。

結局、俺と二人きり。

…ま、まぁ良いか。

赤ちゃんは悪くないからね。

それにほら、丁度良いんだよ。

ママは昼間、家にいるから、萌音ちゃんとの時間は比較的作りやすい。

でも俺は昼間、仕事で家にいないから…。夜の間くらい、萌音ちゃんの傍に居てあげたかった。

腹を割って話をしてくれたらな…とも思っていた。





…布団に入ってから。

「萌音、今日ここで寝るの?」

と、萌音ちゃんはきょとんとして聞いてきた。

「そうだよ」

「…良いの?」

「良いよ?何で駄目なの?」

「…んー…」

…んー?

「…だって、小さい子がいるのに」

萌音ちゃんだって、充分小さいと思うけどなぁ。

「良いんだよ、気にしなくて」

「…そっかー…」

萌音ちゃんは、そう呟いて枕に頭を預けた。

そのまま、しばらく天井を眺めて。

「…怒ってるの?」

と、聞いてきた。

…はい?

「…何が?」

「ううん…。怒ってるのかなーって思って」

「…」

こう聞かれた時、俺はちょっと嬉しかった。

だって、萌音ちゃんの方から話しかけてくれたことって、ほとんどなかったから。

それに、「怒ってるの?」という質問をするということは。

自分が怒られるようなことをした、という自覚があるということだ。

萌音ちゃんは、何も暴力を振るうことに快感を感じている訳じゃない。

ただ、ひとえに自分の身を守る為の暴力なのだ。

だから。

「ううん、怒ってないよ」

本心から、俺はそう答えた。

「…大丈夫だよ、萌音ちゃん」

「…何が?」

「どんなことがあっても、萌音ちゃんが何を抱えていても…パパとママは、萌音ちゃんの味方だからね」

「…」

萌音ちゃんは、しばらく無言になって。

それから。

「…ん」

と、小さく頷いた。

…これで良い。

一番大事なこと、一番伝えたかったことは伝えたのだから。