神に選ばれなかった者達 後編

ようやく、長かった面談が終わり。

学校からの帰り道。

「さて…帰ろう」

「うん」

萌音ちゃんは、素直に頷いた。

さっきまで、狂気の表情で大人を絞め殺そうとしていた子には見えない。

非力そうで、大人しそうな女の子にか…。

…一体どちらが、本当の萌音ちゃんの姿なのか。

多分、どちらも萌音ちゃんなのだ。

だから、俺達親は、どちらの萌音ちゃんも受け入れて、育てていかなくてはならないのだ。

…望むところ。

そんな生半可な覚悟で、里親なんてやってないから。

「萌音ちゃん」

「ふぇ?」

俺は、萌音ちゃんに手を差し出した。

「手、繋いで帰ろっか」

「…手?」

「嫌?」

「ううん」

と答えて、萌音ちゃんは俺が差し出した手をぎゅっ、と握り返してきた。

…小さくて、柔らかい手。

とても、この手で他人を殴っているとは思えない。

…それにしても、自分の子が暴力事件で停学処分になるなんて、さすがに初めての経験だなぁ…。

…どう対処したら良いのか分からないが。

それでも、全くお咎めなしという訳にはいかないし…。

だけど、厳しく叱りつけて、萎縮させたくもなかった。

親のことを、敵ではなく味方だと。

何があっても助けてくれる、守ってくれる存在なのだと分かって欲しかった。

まだ信頼関係も固まっていないのに、厳しく叱り過ぎるのは逆効果でしかない。

…まずは、俺達のことを信じて欲しい。

その上で、萌音ちゃんをこれほど暴力行為に駆り立てる理由が何なのか、それを知りたかった。

…前向きに考えよう。

この停学期間を、一週間学校に登校させてもらえない日、と定義付けるのではなく。

萌音ちゃんと向き合って話し合う、その時間をもらったのだ。

そう考えよう。

折角一週間の時間をもらったのだから、有効に使うとしよう。

その上で、萌音ちゃんの気持ちを理解して、俺達親の気持ちも、萌音ちゃんに分かってもらおう。

少しずつでも良いから。

柔らかな萌音ちゃんの手に触れながら、俺はそう思った。