神に選ばれなかった者達 後編

「萌音はバケモノじゃない…。異常じゃない…。萌音はいつも…バケモノを倒す為に、これまで…」

ぶつぶつと、意味不明な言葉を呟いている。

萌音ちゃんが何を言ってるのか分からない。

だけど、今すぐ彼女を止めなければならないのは確かだった。

「萌音ちゃん!やめるんだ!」

俺は、萌音ちゃんにタックルするようにして抱え込んだ。

必死に抵抗し、拘束から逃れようと足掻く萌音ちゃんの力は、並大抵のものではなかった。

この子は本当に女の子なのか?本当に子供なのか?と思うくらい、凄まじい抵抗だった。

「落ち着くんだ。萌音ちゃん!それ以上は駄目だ!」

「バケモノは殺さなきゃ…バケモノは…。声が、夢の中で導いてくれ…」

一体何を言ってるんだ?

「やめなさい!そんな声は何処にもない!」

「…!」

俺がそう叫んだ瞬間。

萌音ちゃんは、電池が切れたように固まった。

…あれ?

そして、がばっ、と顔を上げた萌音ちゃんは。

既に、怒りの感情が消え失せていた。

いつものぽやんとした顔で、羽交い締めにしていた俺をじーっと見つめた。

そして、こう尋ねてきた。

「…?ここ、現実?」

「えっ?」

予想外の質問に、思わず聞き返してしまったが。

「ここって現実なの?夢の中じゃない?」

「げ…現実だよ?夢って…どういうこと?」

「…ふーん…。…そっかー…」

…何を納得してるの?…一人で。

「現実…現実か…。道理で…いつもの声が聞こえないと…」

「…声…?」

「夢の中かと思っちゃった」

「あ、ちょっ…」

力を緩めてしまったせいで、萌音ちゃんは俺の腕の中から、ひょこっ、と逃れてしまったが。

もう、飛び掛かったり襲い掛かったりすることはなかった。

何事もなかったように、けろっとしている。

…と、とりあえず、殺意の衝動は収まったと思って良いのだろうか?

「萌音ちゃん…。…あ、あなたって…何なの…?」

一連の騒動を目撃して、動揺に動揺したママが、呆然と尋ねた。

…それは俺も聞きたい。大いに聞きたい。

…だけど、今はそれどころではなかった。