神に選ばれなかった者達 後編

そういうことは、翌日からも続いた。

次の日は確か、給食の時に、萌音ちゃんの分のコッペパンを給食当番が配り忘れた。

嫌がらせのつもりじゃなくて、本当にただ忘れていただけだったらしい。

そういう時は、「私の分忘れてるよ」と言って、名乗り出れば良い。

そうすれば、「忘れてた、ごめんね」と言って、萌音ちゃんの分を渡してくれただろう。

しかし萌音ちゃんは、言葉ではなく、相手の子のお腹に拳を捩じ込むという方法で相手に分からせた。

その子は今しがた食べたばかりの給食を吐き出して、その場で悶絶していたとか。

で、その翌日は、確か…。

男の子が、萌音ちゃんをからかったらしい。

どうも、「暴力女」という、非常にストレートな言葉を萌音ちゃん本人に言ったんだって。

タチの悪い冗談だとは思うけど、あながち言い返せないのが悔しいところ。

しかし萌音ちゃんは、相手が男の子でも容赦はしない。

その子が座っていた椅子を引き摺り倒して、脇腹を思いっきり蹴り上げたのだとか。

萌音ちゃんの武器は拳だけじゃなく、蹴りもあったらしい。

ちなみに、その一件が起きた時から、学校への呼び出しには俺も、ママと一緒に同伴した。

その翌日は、何もなかった。

少なくとも、学校に呼び出されることはしなかったらしい。

新しい小学校に通うようになってから、毎日のように呼び出されていたことから。

今日はどういう理由で呼び出されるのだろうと、ママは家の中で戦々恐々としていたらしい。

だけど4日目にして、とうとう呼び出されなかったから、ホッとしていたら。

不意打ちのように、5日目にまたしても呼び出しを受けた。

その理由は、また萌音ちゃんの暴力行為だった。

授業中、先生に質問をされた時。

萌音ちゃんは答えたらしいのだけど、その答えが間違っていたそうで。

それ自体は、別に問題でも何でもないんだけど。

萌音ちゃんが解答を間違えたことを、隣の席の女の子が、クスッ、と笑ったらしい。

人の間違いを笑うのは良くない。それはもっともだ。

だけど、笑われたからって。

その女の子の髪の毛を掴んで引き摺り倒し、強烈な膝蹴りを女の子のお腹に食らわせるなんて。

それはさすがに駄目だ。

女の子は床に手をついて、胃液を撒き散らして悶絶していたらしい。

授業中だろうが、先生が見ていようが、萌音ちゃんには全く関係ないらしい。

馬鹿にして笑われた時点で、その女の子のことを、萌音ちゃんは「敵」と認識していたのだ。

そして萌音ちゃんは、自分の敵に対して容赦がない。

その場にいた先生がすぐさま、萌音ちゃんを制止して。

騒然とする教室の騒ぎを収めるのに、苦労したそうだ。

女の子は念の為に、病院に連れて行かれ。

俺とママは揃って学校から呼び出され。

相手の保護者と先生を交えて、話し合い…という名の、謝罪タイム。

そりゃもう謝った。

相手の保護者は、当然だが、怒り心頭に発していた。

愛娘のお腹を蹴られたのだから、どんな理由があれど、怒るのは当たり前だ。

相手の女の子のお母さんに、それは酷く罵られたことを。

今でも、鮮明に覚えている。