神に選ばれなかった者達 後編

この子は一体、何者なんだ?と思った。

たった6歳なのに、的確に人間の急所をついた攻撃。

格闘技の訓練でも受けているのか。本気でそんなことを考えた。

萌音ちゃんは、自分より遥かに大きな身体の相手を、ぐうの音も出ないほどに打ちのめしたというのに。

勝ち誇った顔も、得意げな顔もせず。

相変わらず、無表情なままだった。

その態度がまた、不気味さを感じさせた。

…何はともあれ、子供達を仲裁するのが先だった。

側頭部を殴られて、目を回している年少の女の子を助け。

それから、鳩尾と顎を殴られて、半ば床に伸びている高校生の男の子を抱き起こした。

二人共、酷くショックを受けているようだった。

それも当然だろう。

萌音ちゃんの暴力は、明らかに限度を超えていた。

そしてその暴力は、家庭内のみならず。

学校でも、同様の行為を行っていた。

新しい学校に通うようになったのだから、時期外れの転校生なのだから。

人間関係とか、色々と大変なのは分かる。

特に女の子は、仲の良い友達と閉鎖的なグループを形成することが多いから。

既に出来上がっているグループの中に、途中から入っていくのは難しいだろう。

それは理解出来るし、俺も出来る限りのサポートをしてあげたい。

転校時に、担任の先生にそれとなく、そこのところを注意して見てあげるよう頼んだりもした。

先生も理解してくださって、子供達の様子はしっかり見ておくと約束してくださった。

しかし、萌音ちゃんの新しい学校生活は、最初の一週間だけで、波乱万丈だった。

まず、初日にやらかした。

学校に呼び出されたママが、担任の先生に聞いたところ。

どうも、クラスメイトの女の子の顔のど真ん中を殴って、また相手に鼻血を噴き出させたらしい。

その理由は、そのクラスメイトの女の子が萌音ちゃんを冗談半分にからかったらしい。

「どの学校から来たの?」と女の子に聞かれて、萌音ちゃんが前に住んでいた場所を答えて。

するとその女の子は、冗談のつもりで、「へぇー田舎じゃん(笑)」と笑ったらしい。

…文字にすると、確かになかなかトゲのある言葉だが。

そこは小学校一年生の言う台詞。

ただ思ったままの感想を述べただけで、悪意なんて微塵もない。

本当に、ただの冗談のつもりだった。

こういう時は、多少不快な思いをしても、「そうなんだよー、田舎だよ(笑)」と当たり障りなく流すか。

あるいは、冗談として受け止められなくても、「私はそうは思わないよ」とか。

せめて、「私は地元が気に入ってるから、そういうことは言わないでね」と、はっきり伝えるべきだった。

そう言われれば、相手の女の子だって理解してくれただろう。

いずれにしても、子供達がよく言う冗談の一種なのだから、それほど真剣に受け止める必要はない。

その女の子も、冗談めかして言ったのだろうし。

まさか次の瞬間に、萌音ちゃんの容赦ない拳を顔面にお見舞いされることになるとは、思ってもいなかっただろう。