…で、改めて、萌音ちゃんに「何でこんなことをしたのか」と聞いたところ。
彼女は何が悪いのか分からないという顔で、「だって、萌音の物を勝手に盗ったから」と答えた。
そうなのだ。彼女にとっては。
それが例え、汚れたティッシュペーパーだろうと、何なら、消しゴムのカスに至るまで全部。
萌音ちゃんの物は、萌音ちゃんの物。
絶対に他人には渡さないし、他人が勝手に持っていったら「盗まれた」と感じる。
そして、容赦のない攻撃をするのだ。
萌音ちゃんの攻撃には、本当に容赦というものがなかった。
子供が叩く時は、大抵、平手でぱちんと叩くものだと思っていたが。
萌音ちゃんの場合、妙に堂に入った動きで、握り拳を固めて思いっきり殴る。
叩くんじゃなくて、殴る。
それも渾身の力を込めて、思いっきりぶん殴るのだ。
そりゃ鼻血だって出る。
しかも、年下と同い年の相手ならともかく。
自分より大きい相手でも、関係なく牙を剥くのだ。
あれは、二日前の夜のこと。
この間萌音ちゃんに殴られて大泣きしていた、あの年少の女の子が発端だった。
あの子が玩具を片付け忘れて、その片付け忘れた玩具を、萌音ちゃんが誤って蹴躓いてしまった。
それがきっかけだった。
萌音ちゃんは、淡々と女の子を殴った。
ぶん殴った。
絵里衣ちゃんにそうしたように、側頭部を渾身の力で。
甲高い女の子の泣き声がして、階下で別の子の宿題を見ていた俺は、まさか、と思って立ち上がった。
しかしその前に、騒ぎを聞きつけた年長の男の子…高校生…が、女の子部屋に駆けつけた。
部屋に飛び込んで、泣きじゃくる女の子を見て、年長の男の子は急いで庇った。
「何してるんだ!」と。
…しかし、萌音ちゃんはその時点で。
止めに入った男の子さえ、自分の「敵」だと認識した。
そして彼女は、自分の敵に対して、一切容赦しないのだ。
俺が、その現場に辿り着いて見たものは。
萌音ちゃんは、男の子の鳩尾に拳を捩じ込んでいる姿だった。
「ぐはっ…」
いくら年下の女の子といえ、渾身のパンチを鳩尾に食らったら、さすがに膝をつく。
こんな小さな女の子に、力で負けるはずがない…という慢心もあったのだと思う。
俺だってそう思っていた。
これまで萌音ちゃんが幾度となく暴力を振るってきた、その相手はいつも。
自分と体格の同じ同級生か、あるいは年下の弟妹だった。
まさか、年上で、しかも男の子が相手でも、関係なく手を上げるとは思っていなかった。
普通なら、いくら飛びかかったって、体格の立派な男子高校生が相手では、まるで歯が立たないはずだった。
…しかし。
萌音ちゃんはまず、鳩尾を狙った。
頭でも背中でもなく、的確に急所を。
そして、思わず膝をついたところを、続けざまに殴りかかった。
今度は顎だった。
顎に容赦ない掌底を食らって、唾を吐きながら真上を向いた。
こんな的確な攻撃を受けるとは思ってなかったのだろう。
何もかも、まともに食らってしまった。
「げほっ…うぇっ…」
男子高校生が、たった6歳の女の子に完全敗北した瞬間だった。
呆然と見ていた俺も、唾液を垂れ流しながら鳩尾を押さえる年長の男の子も、まったく予想していない展開だった。
彼女は何が悪いのか分からないという顔で、「だって、萌音の物を勝手に盗ったから」と答えた。
そうなのだ。彼女にとっては。
それが例え、汚れたティッシュペーパーだろうと、何なら、消しゴムのカスに至るまで全部。
萌音ちゃんの物は、萌音ちゃんの物。
絶対に他人には渡さないし、他人が勝手に持っていったら「盗まれた」と感じる。
そして、容赦のない攻撃をするのだ。
萌音ちゃんの攻撃には、本当に容赦というものがなかった。
子供が叩く時は、大抵、平手でぱちんと叩くものだと思っていたが。
萌音ちゃんの場合、妙に堂に入った動きで、握り拳を固めて思いっきり殴る。
叩くんじゃなくて、殴る。
それも渾身の力を込めて、思いっきりぶん殴るのだ。
そりゃ鼻血だって出る。
しかも、年下と同い年の相手ならともかく。
自分より大きい相手でも、関係なく牙を剥くのだ。
あれは、二日前の夜のこと。
この間萌音ちゃんに殴られて大泣きしていた、あの年少の女の子が発端だった。
あの子が玩具を片付け忘れて、その片付け忘れた玩具を、萌音ちゃんが誤って蹴躓いてしまった。
それがきっかけだった。
萌音ちゃんは、淡々と女の子を殴った。
ぶん殴った。
絵里衣ちゃんにそうしたように、側頭部を渾身の力で。
甲高い女の子の泣き声がして、階下で別の子の宿題を見ていた俺は、まさか、と思って立ち上がった。
しかしその前に、騒ぎを聞きつけた年長の男の子…高校生…が、女の子部屋に駆けつけた。
部屋に飛び込んで、泣きじゃくる女の子を見て、年長の男の子は急いで庇った。
「何してるんだ!」と。
…しかし、萌音ちゃんはその時点で。
止めに入った男の子さえ、自分の「敵」だと認識した。
そして彼女は、自分の敵に対して、一切容赦しないのだ。
俺が、その現場に辿り着いて見たものは。
萌音ちゃんは、男の子の鳩尾に拳を捩じ込んでいる姿だった。
「ぐはっ…」
いくら年下の女の子といえ、渾身のパンチを鳩尾に食らったら、さすがに膝をつく。
こんな小さな女の子に、力で負けるはずがない…という慢心もあったのだと思う。
俺だってそう思っていた。
これまで萌音ちゃんが幾度となく暴力を振るってきた、その相手はいつも。
自分と体格の同じ同級生か、あるいは年下の弟妹だった。
まさか、年上で、しかも男の子が相手でも、関係なく手を上げるとは思っていなかった。
普通なら、いくら飛びかかったって、体格の立派な男子高校生が相手では、まるで歯が立たないはずだった。
…しかし。
萌音ちゃんはまず、鳩尾を狙った。
頭でも背中でもなく、的確に急所を。
そして、思わず膝をついたところを、続けざまに殴りかかった。
今度は顎だった。
顎に容赦ない掌底を食らって、唾を吐きながら真上を向いた。
こんな的確な攻撃を受けるとは思ってなかったのだろう。
何もかも、まともに食らってしまった。
「げほっ…うぇっ…」
男子高校生が、たった6歳の女の子に完全敗北した瞬間だった。
呆然と見ていた俺も、唾液を垂れ流しながら鳩尾を押さえる年長の男の子も、まったく予想していない展開だった。


