翌朝、のこと。
大家族の朝は、いつだって騒がしいものと相場が決まっているが。
この日は、いつもより更に騒がしい…。
…と言うか、事件が起きた。
と言っても、俺は現場を見た訳じゃない。
それが起きた時、俺は一階のダイニングで、子供達の朝食の世話を手伝っていたから。
だから俺が騒ぎを聞きつけたのは、事が起きた後。
二階の女の子部屋から、年少の女の子の甲高い悲鳴のような泣き声が聞こえてきたのだ。
びっくりして、慌てて二階に駆けつけた。
俺が見たのは、床に突っ伏すようにして泣きじゃくっている年少の女の子と。
その女の子を庇って、健気に守ろうとする絵里衣ちゃん。
そして、無表情のまま、昨日買ったばかりの緑色のブラウスを手に持った萌音ちゃんだった。
…これは、一体何事?
「な…何やってるんだ、何があったんだ?」
慌てて部屋の中に飛び入り、床に倒れて泣いている年少の女の子を抱き上げた。
その顔を見て、びっくりした。
女の子は鼻血を噴き出して、涙と鼻水と鼻血で、顔がぐちゃぐちゃになっている。
それから、絵里衣ちゃんは必死の形相で。
「やめて!何でそんなことするの?酷いよ!」
と、萌音ちゃんに向かって叫んでいた。
その様相を見て、理解した。
どうやら、これは萌音ちゃんの仕業らしい、と。
子供同士の喧嘩は珍しくない。どころか、日常茶飯事だ。
逆に、一度も喧嘩が起きなかった日の方が珍しいってくらい。
だけど、その大半が、他愛のないものだ。
ちょっとした意見の対立から、お互い言い合いになったり。
その原因のほとんどが、「自分のお菓子を勝手に食べた」だとか、「ゴミを部屋の中に置きっぱなしにした」だとか。
つまらないきっかけで、つまらない悪口の言い合いをするのが関の山。
本当に殴り合ったり、取っ組み合いの喧嘩が起こることは、ない訳ではないけど…。これはそう多くない。
それに、一応どの子も、喧嘩する相手に応じて手加減をしている。
自分より年下の子には、本気で叩いたり殴ったりはしない。
逆に、年上の子に対しては容赦がなかったりするのだが…。
…だから、これほど一方的な暴力は。
年下の子を相手に、血が出るほど酷く叩くなんて。
しかも、まだ6歳の女の子が。
信じられない光景だったが、実際に目の前で起きている以上、信じない訳にはいかなかった。
腹を据えて、俺は萌音ちゃんの方を向いた。
「萌音ちゃん…。…萌音ちゃんがやったの?」
「…何を?」
くるりとこちらを振り返った萌音ちゃんの顔を見て。
俺は、思わずぎょっとしてしまった。
兄弟喧嘩の仲裁なら、これまで何度もしてきた。
だけど、そういう時子供達は、必ずと言って良いほど、頭に血が上っている。
腹が立ったから手が出るのであって、止めようとしてむしろ、俺がとばっちりで殴られる…。…なんてこともよくあった。
だけど萌音ちゃんは、怒りに顔を歪ませることはなかった。
ただ淡々と、自分のやるべきことを果たした、と言わんばかりに。
いつも通りの無表情で、こちらを見つめていた。
大家族の朝は、いつだって騒がしいものと相場が決まっているが。
この日は、いつもより更に騒がしい…。
…と言うか、事件が起きた。
と言っても、俺は現場を見た訳じゃない。
それが起きた時、俺は一階のダイニングで、子供達の朝食の世話を手伝っていたから。
だから俺が騒ぎを聞きつけたのは、事が起きた後。
二階の女の子部屋から、年少の女の子の甲高い悲鳴のような泣き声が聞こえてきたのだ。
びっくりして、慌てて二階に駆けつけた。
俺が見たのは、床に突っ伏すようにして泣きじゃくっている年少の女の子と。
その女の子を庇って、健気に守ろうとする絵里衣ちゃん。
そして、無表情のまま、昨日買ったばかりの緑色のブラウスを手に持った萌音ちゃんだった。
…これは、一体何事?
「な…何やってるんだ、何があったんだ?」
慌てて部屋の中に飛び入り、床に倒れて泣いている年少の女の子を抱き上げた。
その顔を見て、びっくりした。
女の子は鼻血を噴き出して、涙と鼻水と鼻血で、顔がぐちゃぐちゃになっている。
それから、絵里衣ちゃんは必死の形相で。
「やめて!何でそんなことするの?酷いよ!」
と、萌音ちゃんに向かって叫んでいた。
その様相を見て、理解した。
どうやら、これは萌音ちゃんの仕業らしい、と。
子供同士の喧嘩は珍しくない。どころか、日常茶飯事だ。
逆に、一度も喧嘩が起きなかった日の方が珍しいってくらい。
だけど、その大半が、他愛のないものだ。
ちょっとした意見の対立から、お互い言い合いになったり。
その原因のほとんどが、「自分のお菓子を勝手に食べた」だとか、「ゴミを部屋の中に置きっぱなしにした」だとか。
つまらないきっかけで、つまらない悪口の言い合いをするのが関の山。
本当に殴り合ったり、取っ組み合いの喧嘩が起こることは、ない訳ではないけど…。これはそう多くない。
それに、一応どの子も、喧嘩する相手に応じて手加減をしている。
自分より年下の子には、本気で叩いたり殴ったりはしない。
逆に、年上の子に対しては容赦がなかったりするのだが…。
…だから、これほど一方的な暴力は。
年下の子を相手に、血が出るほど酷く叩くなんて。
しかも、まだ6歳の女の子が。
信じられない光景だったが、実際に目の前で起きている以上、信じない訳にはいかなかった。
腹を据えて、俺は萌音ちゃんの方を向いた。
「萌音ちゃん…。…萌音ちゃんがやったの?」
「…何を?」
くるりとこちらを振り返った萌音ちゃんの顔を見て。
俺は、思わずぎょっとしてしまった。
兄弟喧嘩の仲裁なら、これまで何度もしてきた。
だけど、そういう時子供達は、必ずと言って良いほど、頭に血が上っている。
腹が立ったから手が出るのであって、止めようとしてむしろ、俺がとばっちりで殴られる…。…なんてこともよくあった。
だけど萌音ちゃんは、怒りに顔を歪ませることはなかった。
ただ淡々と、自分のやるべきことを果たした、と言わんばかりに。
いつも通りの無表情で、こちらを見つめていた。


