神に選ばれなかった者達 後編

その日、萌音ちゃんはママに連れられて、買い物に行った。

洋服や、翌日から通うことになる小学校の制服と、その他必要なもの揃える為に。

萌音ちゃんは実家から持ってきた荷物が少なかった…と言うか、やたら偏ってたから。

揃えなきゃいけないものは、たくさんあるだろう。

そこで、ママと二人で買い物に行ってもらった。

ついでに、これを機にママとも仲良くなれるように、という配慮もある。

やっぱり、異性である俺よりも、同性であるママの方が話しやすいこともあるだろう。

同じように愛情を注いでいるはずなのに、「ママの方が良い!」と子供に言われる時ほど、切ない思いをする時はない。

仕方ないけどね。俺は普段、仕事にかまけてばかりで…。

実際に、毎日子供達の面倒を見てくれているのは、ママだから…。

少しは打ち解けて、仲良くなって帰ってきてくれると良いな、と思いながら待っていた。

…家で、他の子達の面倒を見ながら待っていると。





「ただいまー」

…お、帰ってきたようだ。

「あ、ママだ!」

「ママー!お帰り!」

あっ…。

さっきまで一緒に遊んでたのに…。

ママが帰ってきた途端、子供達は玩具もパパも放り出し、ママを迎えに玄関に走っていってしまった。

切ないなぁ…。

…あと、玩具はちゃんと片付けようね。

リビングに、子供達に群がられたママと、それから真新しい服を着た萌音ちゃんが戻ってきた。

緑地に、白いリボンとフリルがあしらわれた可愛らしいブラウスである。

おぉ、似合う似合う。

絵里衣ちゃんの服も似合うけど、やっぱり新しい服も良いね。

早速着替えて帰ってきたらしい。

「お帰り、二人共。必要なもの、全部揃った?」

「ただいま。えぇ、準備は大丈夫。明日から学校に行けるわね、萌音ちゃん」

ママは努めて明るく、萌音ちゃんに話しかけた。

この機会に、ママと萌音ちゃんが少しでも仲良くなっていたら…と、期待していたのだが。

「うん」

萌音ちゃんは相変わらず無表情で、こくりと頷いただけ。

…まぁ、そう簡単には行かないよね。

絆というものは、一朝一夕で築けるものではない。

ママも、それは分かっているのだろう。

萌音ちゃんに塩対応されても、少しもヘコむ様子は見せず。

「さぁ、絵里衣ちゃんの服は、洗って返しましょうね。萌音ちゃんの服は、畳んでタンスにしまいましょう」

「…萌音のお洋服?」

「そうよ。今日買ってきたのは、萌音ちゃんのお洋服」

「…萌音の…」

萌音ちゃんは、自分の着ている緑色のブラウスを見下ろした。

心做しか、ちょっと嬉しそうだった。

…良かった。



…しかし、この翌日。

このブラウスが、最初のトラブルの原因となるのである。