神に選ばれなかった者達 後編

早速問題が起きたのは、その翌日。

萌音ちゃんが我が家にやって来て、二日目のことだった。

萌音ちゃんは、あくびをしながらリビングに降りてきた。

「おはよう、萌音ちゃん」

「…んん…」

「大丈夫?昨日はよく眠れた?」

「…ちっちゃいバケモノがいたの」

「えっ?」

萌音ちゃんは、眠そうにしながらも、淡々とそう答えた。

ちっちゃい…。…何だって?

「背中に羽根が生えてて…。…目が真ん丸で、大きくて…」

「え…えぇと…?」

「透明な、黄色い卵の中にいたの」

「…??」

萌音ちゃんが何を言っているのか、さっぱり分からなかった。

…何の話?

「萌音ちゃん…?」

「…変な世界だった…」

「…」

なんと返事をして良いか分からず、思わず言葉を失ってしまった。

後になって知ったことだ。

この子には現実の世界と、もう一つ…夢の世界を生きている。

だからこの時萌音ちゃんは、昨晩見た夢の話をしていたのだ。

だけどこの時の俺は、まだそんなこと知らなかったから。

何を言っているのか分からなくて、首を傾げていた訳だ。

仕方なく、俺は強引に話題を変えることにした。

「えぇと…萌音ちゃん、着替えてないの?」

「ふぇ?」

萌音ちゃんは、まだパジャマ姿のままだった。

この家では、体調が悪い時などの例外を除いて、パジャマ姿のまま家の中をうろうろすることは禁じている。

下は赤ん坊から、上は中高生まで、幅広い年代層が同居している家だから。そういうところは一応、ちゃんとね。

ちなみに、お風呂上がりでもちゃんと服を着る、というルールもある。

大人数での共同生活なのだから、お互いに身だしなみには気をつけよう、という方針なのである。

だけど、まだ萌音ちゃんはこの家に来たばかりなんだし。

あんまり、くどくどと言いたくはなかった。

少しずつ適応してくれれば良いから。

「起きたら、まず服を着替えてきてね」

このくらい、さらっと説明するくらいで良いだろう。

幸い、萌音ちゃんは。

「うん、分かったー」

素直にそう答えて、着替える為に女の子部屋に戻った。

萌音ちゃんも素直な良い子だな。

あの歳の子供は、何事も「いや!」と言って反抗することも多いんだけど…。

…しかし。

「着替えた」

「あ、うんお帰り…。って、あれ?」

「ふぇ?」

何故か、萌音ちゃんはやたらと季節外れな格好をしていた。

もう暑くなる時期なのに、もこもこのセーターを着ている。

…これは如何に。