神に選ばれなかった者達 後編

…よし、まずは。

「萌音ちゃん、この子、絵里衣ちゃん」

俺はまず真っ先に、絵里衣ちゃんという女の子を紹介した。

この子はまだ赤ん坊の頃から、この家で一緒に暮らしている。

血の繋がりがないことを承知の上で、俺とママのことを本当の親のように慕ってくれている。

そして、まだ小さい弟や妹の面倒を見て、家のお手伝いもよくしてくれる、素直で優しい子だ。

だけど、萌音ちゃんに紹介したのは、それが理由ではない。

絵里衣ちゃんが、萌音ちゃんと同い年の子だからだ。

絵里衣ちゃんの方も、萌音ちゃんが来てくれることをとても楽しみにしていた。

自分と同い年の女の子が来ると聞いて、一番喜んでいたのが絵里衣ちゃんだ。

その絵里衣ちゃんが、物怖じせずに萌音ちゃんに話しかけた。

「萌音ちゃん、私、絵里衣(えりい)っていうの。宜しくね」

と言って、まずは親睦の握手をと、萌音ちゃんの手をぎゅっと握ったが。

「…」

萌音ちゃんは、ぼんやりとその手を見下ろすだけで。

何一つ、言葉を返すことはなかった。

怖がっている、初対面で緊張している、と言うよりは。

別に興味がない、と言わんばかり。

この反応は予想していなかったらしく、絵里衣ちゃんは困り顔だった。

「…ごめんね、萌音ちゃん。まだ緊張してるみたい」

俺はそう言って、絵里衣ちゃんをフォローした。

本当は、萌音ちゃんは一切緊張していない。恥ずかしがっている訳でもない。それは分かっている。

だけど、そう言うのが一番…説得力がある気がした。

「また日を改めて、萌音ちゃんと遊んでくれる?」

「う…うん。楽しみにしてるね」

絵里衣ちゃんは戸惑いながらも、納得して引き下がってくれた。

この子は本当に良い子だ。

…そして、萌音ちゃんだって。

「…萌音ちゃん」

俺はその場に膝をつき、萌音ちゃんに視線を合わせた。

「ゆっくり慣れていけば良いからね。困ったことや嫌なことがあったら、パパでもママでも良いから、何でも相談して」

「…ん」

こくりと、頷く萌音ちゃん。

…よし。今は、これで良い。

ここで暮らしている子供は、どの子もそうだ。

最初から順応していた子はいない。少しずつ時間をかけて、色んな経験を積み重ねて。

そうして絆を強くしていって、気がつけば家族になっている。

…そういうものだと思っている。

「さぁ、萌音ちゃん。荷物を片付けようか」

「…荷物?」

「うん、そのおっきいスーツケース。女の子部屋は二階だから。一緒に運ぼうか」

「うん」

と、答えるなり。

萌音ちゃんは、自分の重いスーツケースの取っ手を掴んだ。

「あ、待って。それ重いでしょ?階段だと危ないから、パパが、」

「ふぇ?」

「…」

…あろうことか。

萌音ちゃんは、ひょいっ、と軽々とスーツケースを持ち上げ。

タライみたいに、自分の頭の頭上まで持ち上げていた。

その時である。

この子が、女の子らしからぬ怪力の持ち主だということに気づいたのは。