神に選ばれなかった者達 後編

初めて、家に連れて帰ると。

そこでは家族達が、新しい姉妹を迎える準備をしていた。

新しい子が家に来る時は、いつもそうだ。

最大の歓迎をする。

だって、大切な家族が増えるんだから。

「ようこそ、萌音ちゃん。我が家へ」

努めて明るい笑顔で、萌音ちゃんにそう言った。

しかし。

「…」

萌音ちゃんは、全く感情を感じさせない無表情だった。

我が家の恒例行事である、歓迎会だが。

歓迎される本人は、あまり嬉しそうではない。

これは萌音ちゃんに限った話ではなく、他の子も同様の反応をする場合は多い。

そもそも、初めて来た家で、いくら「緊張しないで、くつろいでね」と言っても、それはなかなか難しい。

余程図太い神経でなければ、そんなことは不可能だろう。

大抵の子は緊張して、くつろぐどころではない。

歓迎会を用意したのは良いものの、家に着くなり、緊張と不安が爆発し。

ひたすら泣きじゃくって、歓迎会どころじゃない、ということもあった。

だけど、萌音ちゃんは…。

歓迎会を喜んでいないと言うより…緊張して物が言えない、と言うより…。

全然興味がないみたいな様子で、無表情だった。

「萌音ちゃん、これから宜しくね」

ママが笑顔で声をかけても、萌音ちゃんは笑うでも泣くでもなく、こくりと頷いただけだった。

これは、かつてない反応だった。

泣いてくれた方が、ずっと安心出来ただろう。

子供は自分の感情に正直だ。楽しければ大声で笑うし、怒る時は大声で地団駄を踏んで怒る。

悲しかったり痛かったりすると、思いっきり大声で泣く…。

それが、当たり前の子供の反応のはずだ。

だけど、萌音ちゃんは違う。

とにかくこの子は、泣かなかった。

泣かない子は偉い、と思うだろうか。

俺はそうは思わない。

子供は子供らしく、時には感情を爆発させるべきなのだ。

それを繰り返すうちに、段々と感情のコントロールが出来るようになる。

だから、楽しい時に笑って、悲しい時は泣くべきなのだ。

不安だったり緊張した時は、遠慮せずに怯えるべきなのだ。

それなのに萌音ちゃんは、無表情だった。

喜怒哀楽、どの感情も感じられなかった。

そんな萌音ちゃんの態度に、ママも戸惑っているのが分かった。

それでも、大人が狼狽える訳にはいかなかった。

子供は、大人が思っているより敏感だ。

すぐ傍にいる大人が、自分の態度にどんな感情を抱いているか。

言葉に出来ないものほど、子供は敏感にそれを感じ取るのだから。

それに、俺やママが笑っていたら。

萌音ちゃんも心を許して、微笑んでくれるかもしれないから。