神に選ばれなかった者達 後編

ーーーーー…たくさんいる子供達の一人、絵里衣ちゃんがパジャマ姿のまま降りてきて。

「萌音ちゃんにいつもの発作が起きた」と言った時。

俺は、「あぁ、久し振りに来たか」と思った。

たまにこうなるんだよね、あの子。

近頃はなかったから、落ち着いたのかなと思ってたけど…。

そういう訳ではなかったらしい。

…まぁ、しょうがないよね。

それで、二階の女の子部屋に来てみたら、案の定。

萌音ちゃんは、たくさんのノートに囲まれていて。

古ぼけて汚れたノートを、真剣な眼差しで凝視していた。

かつてないほどに真面目な顔。

いつもはぽやんとしているから、ギャップが凄い。

しかも、こういう時はいつも…。

「萌音ちゃん」

背後から話しかけても、萌音ちゃんはまるで聞こえていないかのように。

ノートを凝視したまま、微動だにしなかった。

…うーん、無視。

無視は…ちょっと傷つくかな。

反抗期の子供は、よくこうやって親の言うことを無視したり、言い返してくるものだけど。

萌音ちゃんの場合は、反抗する為に無視していると言うより。

ただ単に、声をかけられていることに気づいてないのだ。

この子に悪意はない。

そう。いつだって、この子には悪意がないのだ。

それはこの子の良いところでもあり…厄介なところでもある。

「おーい。萌音ちゃん、大丈夫?」

「…」

「萌音ちゃん」

「…ふぇ?」

肩をとんとんして、初めて。

萌音ちゃんは、自分が話しかけられていることに気がついたらしい。

我に返った、みたいな感じ。

萌音ちゃんはきょとんとした顔で、じーっとこちらを見つめ。

こてん、と首を傾げた。

「…?ここって現実?夢の中…?」

…まただ。

たまにこう言うんだよね。

夢の中がどうとか…現実がどうとか。

萌音ちゃんは長い間、ずっと小さい時から、悪夢を見ている。

萌音ちゃんにはこの現実と、そして夢の中の世界。

二つの世界で生きているのだ。…不思議なことに。

「現実だよ」

「ふーん…。そっか」

おかえり。

…って、それは良いのだけど。

「萌音ちゃん。またこんなに散らかしちゃって」

「ふぇ?」

そう指摘されて、萌音ちゃんは自分の周りを見渡した。

どうやら、自分がノートまみれなことに気づいたらしい。