神に選ばれなかった者達 後編

「もしかして、そうやって優しくすれば、ほたるが戻ってくると思ってる?」

「…!」

…やっぱり。

そのほたるママの反応を見る限り。

やっぱり…随分と甘っちょろいことを考えていたらしい。

「そんなことしても、ほたるは目を覚まさないと思うよ」

あいつ、筋金入りの寝坊助だからさ。

ふぁにがどれだけ、どれっ…だけ、一生懸命呼びかけても、完全スルーだから。

手料理を食べさせて、布団で寝させて…そんなこと程度で、ほたるが目覚めるとでも?

そんな甘い期待を抱くのは、裏切られるだけだからやめといた方が良い。

期待すればするだけ、辛い思いをするのはあんたさんの方だよ。

「ふぁににいくら優しくしたって、それふぁにだから。そんなことでほたるが戻ると思ったら…」

「…違う、そうじゃないわ」

あん?

「あなたが…あなたがほたるなんでしょ?」

「…はい…?」

「いい加減、二重人格の演技はやめて…あなたは、ほたる、」

「…そんな訳ないだろ。何言ってんの」

呆れて物が言えないな。

あろうことか…あろうことか、二重人格の「演技」とは。

人間、認めたくないものはなかなか認められないらしい。

それとも、自分の理解の及ばないことを、無理矢理理解しようとしてそんな解釈になったのか?

いずれにせよ、それは妄想だよ。

「あのさぁ…いくら現実から目を逸らそうとしても、それ無駄だから」

「現実から…って、そんな…」

「ふぁにはふぁにだよ。ほたるの演技じゃない。顔と身体が同じでも、中身は別の人間なんだってことを理解して欲しいね」

別に、ふぁにという人格を認めろ、とは言わんよ。

あんたさんの息子…ほたるとは、別人なんだから。

でもさ、ふぁにはほたるじゃないんだってことは、理解して欲しいね。

「これが演技なように見えんのかい?ふぁに、何なら最初はほたるの記憶すら把握してなかったけど?」

「…」

「現実を認めな。あんたさんの息子はもういない。自殺して、死んじゃったからね。無理矢理揺り起こしたって起きてくれない」

だから、ふぁにが出てきたんじゃないか。

…大体。

「そもそも、あんたさんがほたるのことを、少しでも気にかけているとは心外だったね」

「…それは…」

自覚、あったのか?

「ふぁにがほたると入れ替わってから、もう何年経ったと思ってるんだ?これまでずーっとふぁにだったのに、あんたさん、ちっとも気付かなかったじゃん」

それを言われると痛い、みたいな顔してんじゃあないよ。

今更。

これまでずーっと、何年も、ふぁにはふぁにだった。

あんたさんの息子が、ふぁにと入れ替わってること…ふぁにがそうと言うまで、全然気付かなかった癖に。

何だって今更、ほたるに戻ってきてもらおうとしてんの?

おっせーよ。やるならもっと早くやれよ。

そうすれば、ほたるがこんなに深く眠りにつくことはなかったかもしれないのに…。

…もう、何もかも遅いんだっての。