神に選ばれなかった者達 後編

それに、食事の内容も、ふぁにの場合は普通の人とは違っていた。

ふぁにがいつも食べるものは、ねこまんまが基本。

あとはカップ麺とか、食パンとか菓子パンとか…余り物の冷やご飯とか。

あと、朝食用のシリアル。

そういう、特に調理の必要もなく、バリッと開けてペロッと簡単に食べられる食べ物ばかりだった。

つまり、家庭で作った手作り料理なんてものを、ろくに食べたことがない。

その為、ふぁには手作り料理というものが、どうにも気味悪くて仕方なかった。

さっきも言った通り、何が入ってるか分からないからさ。

ふぁににとって食事というのは、味や食感を楽しむものでも、家族とコミュニケーションを取る機会でもなく。

ただ、空腹を満たす為の作業でしかなかった。

…腹が満たされれば、それで良くね?

わざわざ、手作り料理なんて食べる必要はない。

味なんてどうでも良い。酸っぱかろうが甘かろうが、苦かろうが。

空腹じゃなくなるなら、何でも良いよ。

毎日毎日、「このおかずが美味しい」だの、「この野菜嫌い」だの。

いちいち、どうでも良い感想を言いながら食事をする妹尾家の人々を見る度に。

ふぁには、内心首を傾げていたものだ。

…どうでも良くね?そんなこと。って。

この人達、何で毎日こんな無駄なことしながら生きてるんだろうなぁ…って。

とはいえ、ふぁには妹尾家の一員じゃないから。

この人達がいかに、時間や労力やお金を無駄にしようが、それはこの人達の勝手。

ふぁにには関係のないこと。と思っていた。

…けれど…。

ふぁにまで、この食事を食べさせられることになるなら、それは話が別だよ。

「何か食べた方が良いわ。全部じゃなくても…」

「…」

「せめて、スープだけでも…。温め直してあげるから」

「…」

…そのスープも、インスタントじゃなくて、自分で作ったものなんだろ?

何が入ってんの?それ…。…わざわざ液体の料理を勧めてくるってところが怖い。

何入ってんのか分かんないじゃん。

それに、何て言うか…凄くムズムズする。

…いや、違うな。

ぶっちゃけ、めちゃくちゃ気持ち悪い。

スープが、じゃないよ。

この、ほたるママの態度が、だよ。

昨日まで、ふぁにが指を怪我するまで、これまでずーっと、ふぁにのこともほたるのことも、完全スルーだった癖に。

いきなり、気持ち悪いくらい気を遣ってきてさ。

いつもみたいに、汚物を見るような目で見ろよ。

今までずっとそうだったじゃん。

「…何を期待してんの?」

「え?」

考えられる可能性は二つ。

「ほたるとふぁにが別人だって知って、ふぁにに対しては親切に接してあげようとか思ってる?」

それなら良いよ。

ほたるはほたる、ふぁにはふぁにとして、別人として区別して接しようとしてくれてるんなら。

ほたるママが蛇蝎のごとく嫌っていたのはほたる。ふぁにじゃない。

だから、ふぁにに対してはお客様扱いしてくれようとしている。それならまぁ…それはそれで気持ち悪いけど…。良いよ。

ふぁにとほたるが別人だって、認めてくれてるってことだからな。

でも、もしそうじゃないなら。

そうじゃないなら…ふぁには、はっきりと伝えておかないといけない。