神に選ばれなかった者達 後編

おい。なんか…大丈夫?

ちょっと心配になってきた。

昨日は病院に連れていってくれて、ちゃんと部屋の中で眠らせてくれて。

それで、今朝は朝食まで。

一体、どういう風の吹き回し?

あまりの風速に、ふぁに、飛んでいってしまいそうなんだが。

「あ…そう…」

…それ、まさか毒でも入ってない?食べて大丈夫?

…って言われても、ふぁに、別に…。

「悪いけど、今全然食欲ないから…」

腹ペコだったら食べたかもしれないけど…。

いや、腹ペコでも食べてなかったかも。

だって、他人の手作り料理って…なんか…怖くね?

何入ってるか分からないじゃん。

ふぁにに対する嫌がらせとばかりに、ゴミとか、ガラスの破片とか、毒とか入ってるかもしれないじゃん。

恐ろしくて食べられないね。

それなのに、ほたるママは。

「でも…だって、昨日も食べてないのに…」

「…」

昨日食べてないことと、今日朝食を食べないことに、何の関係があるんだい?

ふぁには生まれてこの方、基本的な人間の生活サイクルというものを誰にも学んだことがなかった。

つまり、1日3食食べるとか、栄養バランスの取れた食事を摂るとか。

いつも決まった時間に寝て、決まった時間に起きるとか。

そういう、人間として当然の規則正しい生活が、完全に破綻していた。

昔から、ふぁにはずっとそうだ。

生まれてから、一度として、誰もそういうことを教えてくれなかったからでもあるけど。

そのサイクルが崩れたとしても、修正してくれる人間がいなかったからでもある。

普通の子供だったら、そういうことは親が教えてくれるんだろうけど。

ふぁにに親なんていないし、ふぁにがめちゃくちゃな生活をしていても、誰もそれを修正してはくれなかった。

従って、現実でのふぁにの生活は、一言で言うと、しっちゃかめっちゃかだった。

1日3食、決まった時間に食べる?

ないない。

何でそんな面倒なことをしなきゃいけないんだ。

腹が減ったら食べれば良いし、腹が減ってなきゃ食べなければ良い。

そういうもんだろ?携帯の充電や、車の給油みたいなものだ。

いちいち、時間を決めて1日に何回、この時間に充電する、とか。週に何回、この日に給油する、とか。

そんなの、こだわりでもない限り、そんなことしないだろ?

バッテリー残量が減ったタイミングで充電するし、ガス欠が近くなったらガソスタに行く。

大してバッテリーが減ってないのに充電するなんて、電気の無駄。

まだまだ充分走れるのに、無駄に給油するなんて、ガソリンの無駄。

それと同じで、特に腹が減ってないのに食事をするなんて、時間と食べ物の無駄でしかない。

従ってふぁにはいつも、腹が減ったタイミングで食事をし、それ以外の時は食べなかった。

食欲なんて、その時々によって変わるじゃん。

「なんか今日はお腹減ったな」って思う時もあれば、「今日は食欲ないな」って時もある。

食欲如何に関わらず、1日3回も、決まった時間に食べるなんて。

どうしてそんな面倒な枷を、自らに嵌めようとするなんて…ふぁににはさっぱり理解出来なかった。