神に選ばれなかった者達 後編

…そんな顔されると、何を言ったら良いのか分からないんだが。

何?昨日の今日で、勝手に救急箱を漁るなって?

それとも、鎮痛剤を略奪してたの、見られた…?

やべっ。面倒事は御免だぞ。

しかし、ほたるママは、何もふぁにを責めようとしている訳ではなかった。

「何してるの…?…痛み止め?」

「あー…うん」

「やっぱり痛いの?指…」

「…」

そりゃ痛いだろ。

あんたも指、3本まとめて折られてみろよ。爪まで剥いで。

痛くない訳が無い。

「痛み止め、病院で処方してもらえば良かったわね…」

「…いや、別に…」

市販の鎮痛剤を飲むだけでも、だいぶ違うけど。

…それより。

どうも、鎮痛剤をパクったことを見咎められている訳ではなさそうだ。

「何か用…?」

「…朝食、食べてないの?」

は?

ほたるママは、キッチンのテーブルに置き去りにされたままの、ラップをかけた手つかずの朝食を見つめながら言った。

「何か食べた?」

…ふぁにに聞いてるんだよな?これ。

ふぁには周囲をきょろきょろして、周りに誰もいないことを確認した。

…やっぱり、ふぁにに向かって聞いているらしい。

家の中で、家族と会話するのって、全然慣れてないから…。…変な感じ。

「…いや…食べてないけど」

今日はまだ、何も…。

…と思ったけど、昨日も食べてないな。そういえば。

何か食べようと思ってリビングに向かったら、ほたるのお姉ちゃんの別れ話を聞いちゃって。

そんで、指ガツンってやられて…。

その後は、痛みのあまり、食欲なんて空の彼方に消えてしまっていた。

今も、別に何か食べたいとは思わない。

食欲よりも、痛みの方が勝っている。

「薬を飲んだなら、何か食べなきゃ駄目よ」

「…別に…これくらいいつものことだし…」

何ともないけど?

「でも、昨日の夜も何も食べてなかったでしょ?」

「…それがどうかしたの?」

心底不思議だった。

昨日の夜、ふぁにが何も食べなかったからって、それがあんたさんに、どう関係があるの?

関係なくね?

「どうかしたの、って…。だって…夕飯…今朝の朝食も…」

「…?」

「…あれ、あなたの分なのよ」

と、ほたるママはキッチンテーブルの上の朝食を指差した。

これまた、心底びっくりした。

非常にびっくりした。

ふぁにが生まれて以来、ほたるママがほたるの為に食事を作ってくれるなんて、初めての経験だった。