神に選ばれなかった者達 後編

…そうして、その夜はもう、それ以上は動かなかった。

そして、翌日。





「…ん…」

目が覚めると、ふぁには横になって、見覚えのない天井を見上げていた。

あれ…。何処だっけ、ここ…。

…あ、そうだ。昨晩は、いつもの押し入れじゃなくて。

ちゃんと部屋の中で、きちんと布団を敷いて、その上で寝てたんだった。

すげーな…。本当は、毎日こうなのが当たり前のはずなんだけど。

物凄く新鮮な気分がする。

初めてじゃねーか?

ふぁにがこの世で目覚めて以来だよ。ちゃんと布団で寝てるなんて。

こんな当たり前のことに、大層驚いてしまうふぁにの感覚って、一体。

と、同時に。

「いてっ…いててて…」

手をついて、起き上がろうとしたのが間違いだった。

左手の指3本が、千切れるような痛みを発した。

あー…。…あぁ、そうだった…。

現実では、指3本折られてるんだった…。

畜生、夢の中の方が遥かに危険に満ちているはずなのに。

何で、現実の方で痛い思いしなきゃいけないんだよ。おかしいだろ。

ふぁにの左手の指には、包帯がぐるぐると巻かれていた。

…はぁ、やれやれ。

現実では、何日経っても痛みはリセットされないからな。

不便だなぁ、現実…。

こんな状態で、学校なんて行きたくないが。

今日は日曜日なので、セーフ。

明日の月曜までに、少しは痛みが軽減されると良いのだが…。

…と、思っていたけれど。

布団を片付けたり、顔を洗ったり、着替えたりと、朝の支度を色々としているうちに。

結局指を使わざるを得なくて、段々じくじくと痛みが増してきた。

…いってー…。たかが指3本なのに、想像以上に痛い。

痛みには慣れているつもりだが、それはあくまで夢の中の話。

特に、敷布団を上げたり下ろしたりする作業。

あれが辛かった。

畜生。押し入れで寝ていた頃は、こんな面倒なことしなくて良かったんだが。

なんてことだ…。ふぁには、結局押し入れで寝る方が良かったというのか…。

不便で窮屈な押し入れでの寝起きも、いっぱしに良いところがあったんだなぁ、って。

…そんなことはどうでも良いけど、それはそれとして、いてぇ。

そうだ。そうだ。鎮痛剤、飲もうか。

昨日、救急箱の中で見つけたアレ。

また拝借させてもらおう。

そう思って、ふぁには寝室を出た。

二階の別の部屋から、子供達の甲高いはしゃぎ声が聞こえてきた。

どうやら、ほたるの弟か、妹の友達が家に来ているらしい。

ふーん。良いねぇ、お友達がたくさんいて。

リア友はほたるしかいないふぁにには、羨ましい話だよ。

夢の中の友達、通称ユメ友なら、何人かいるんだけどなぁ。

って、そんな友達がいるのは、ふぁにくらいか。