神に選ばれなかった者達 後編

最初、「彼」と会った時。

私はあの時、酷く怯えていた。

…今もそうだけど。

だけどあの時、私はある日突然、酷い悪夢を見るようになった。

学校の屋上で、ゾンビに襲われて殺される夢だ。

最初にゾンビを見た時は、別に怖くなかった。

何だかリアルなホラー映画を観ているみたいで、「凄い」と思ったくらいだ。

でもそんな好奇心は、そのゾンビに食い殺される激しい痛みで、一気に恐怖に塗り替えられた。

夢の中なのに、何でこんなにリアルな痛みを味わうのか。

それは、これまで経験したことのない痛みだった。

人間が、人生で一度だけ味わう痛みだった。

命を奪われる痛み。死の痛みだ。

こうなったらもう、好奇心どころじゃなかった。

あまりの苦痛に、本当にこれは夢なのかと疑ったほどだ。

だが、どんなに疑っても、ゾンビが現実に現れるなんて有り得ない。

この痛みは現実だ。でも、ここは夢の中以外の何物でもない。

ようやく命の灯火が消えて、ようやく悪夢から解放されると思ったのに。

死に戻りをした私は、再び学校の屋上に立っていた。

そして、再びゾンビに襲われて、殺されて…。

また死に戻り、また学校の屋上に立っていて…またゾンビに襲われて…。

それは、耐えられない死のループだった。

怖くて、痛くて、怯えて…。

目が覚めた時、あまりの恐怖に、汗をびっしょりとかいていた。

それが一日だけの体験だったなら、「嫌な悪夢だったな」で終わらせることも出来るだろう。

でも、一日だけじゃなかった。

翌日も、その翌日も…終わりなく悪夢は続いた。

これはもしかして、永遠に続くんじゃないか?

そう思って、怖くて、震えて…何も出来なくて。

おまけに、昼間起きている時も…不可思議な現状に悩まされるようになっていた。

視界に黒いノイズが走ったり、奇妙なモヤが見えたり。

気持ち悪くて、現実じゃないみたいだった。

後で知ったことだけど、それが現実への「侵食」だったらしい。

夢の中で何度も殺されることによって、現実の世界が「侵食」される。

「侵食」を防ぐ為には、夢の中でバケモノを殺すしかない…。

という法則があることを、私は当然知らなかった。

知っていたとしても、私に何かが出来たとは思えない。

何せ私に出来たことは、怯えて、屋上に蹲っていることだけだったんだから。