神に選ばれなかった者達 後編

ほたるママがどう思おうと、認めようと認めまいと、関係ない。

ほたるはほたるだし、ふぁにはふぁにだ。

この事実は変わらない。永遠に。
 
ほたるママが診察室から出てくる気配がしたから、ふぁには急いで待合室に戻った。

立ち聞きなんてしてませんよー、ってね。

病院から家までの帰り道は、お互い無言だった。

ふぁには何も言わなかったし、その必要もなかった。

でもほたるママは、ずっと、何か言いたそうな顔をしていた。

多分、色んなことを根掘り葉掘り、聞きたかったんだろう。

聞くのは別に構わないよ。

ふぁにに答えられることなら、何でも答えてあげる。

ほたるママがどうかは知らないけど、ふぁにには、疚しいことなんて何もないからな。

でも、結局ほたるママは何も聞かなかった。

度胸ってものがないな。度胸ってものが。

…で、帰宅後。

夜になったので、ふぁにはいつも通り、押し入れで寝ようと思ったのだが。

「今日は二階の部屋で寝なさい」

ほたるママが、ふぁににそう声をかけた。

これにはびっくりした。

ごめん、上手く聞き取れなかったからもう一回言ってもらって良い?

本当に?「貴様に室内は勿体ない。外で寝ろ」と言われてるんじゃなくて?

「部屋の中で、ちゃんと布団に横になって寝る」という当たり前のことが、ふぁににとっては有り得ない贅沢だったから。

それを許可されるなんて、まるで高級ホテルに宿泊させてもらえる気分である。

ふぁにもびっくりしたけど、それを横で聞いていた、ほたるの兄弟達もびっくりしていた。

「どういう風の吹き回し?」みたいな。

案の定、ほたるの兄が聞いた。

「どうしたんだよ?…どういう風の吹き回し?」

ほら。ずばり、その通りの台詞。

ほたるママは、困ったような顔で答えた。

「良いから、そうしなさい」

「…あ、そう…」

…。

何?この態度…。

なんか、よく分からんけど…ふぁにに気、遣ってんのかね?

…今更?遅くね?

優しくすれば、ほたるが目を覚ますんじゃないか、とでも思ってる?

安直な考えだなぁ。

それで起きてくれるんなら良いけどな。

ほたるは筋金入りのお寝坊さんだから、今更いくら気を遣ってくれても、そう簡単には起きないと思うけど。

ってか、もう手遅れなのでは?

…ま、良いか。

下手に「手遅れだと思うよ」と言って、「じゃあやっぱり押し入れで寝ろ」と言われたら損だし。

今日くらいは、きちんと横になって、布団の上で寝させてもらうよ。

いやぁ、素晴らしい贅沢だな。