神に選ばれなかった者達 後編

「その、怪我…。一体何があったの?」

「…」

…珍しいことがあるもんだ。

初めてじゃないか?

ほたるママが、ふぁにのすることに関心を持ったのは。

それはまぁ別に良いんだけど…。

「だから、あんたさんの娘さんにドア、バチンッてされたんだよ。ちゃんと躾しといてくれよ」

そう言いながら、ふぁには自分の手の手当てを続けた。

淡々と手当てをするふぁにのことを、ほたるママは奇妙な生き物でも見るかのように見ていた。

…何だよ。

「何でそんなに落ち着いてるの…?」

何で…って言われても。

「それに…何でそんなに他人事なの?」

「何でって…他人だからだろ?」

「えっ?」

え、じゃないでしょ。

ふぁにのこと、自分の息子のつもりでいたのか?

それはほたるのことであって、ふぁにじゃないぞ。

「ほたる。あなた、さっきから何を、」

「ほたるじゃないよ」

「えっ?」

片手で器用に包帯を巻きながら、ふぁにはそう答えた。

いってーなこれ。添え木とかしといた方が良いのかね?

さすがに、添え木までは救急箱に入ってないぞ。

「自分はふぁに。妹尾ふぁにだよ」

「ふぁに…?誰なの?ふぁにって」

「だから、自分の名前。ほたるじゃなくて、ふぁに」

「…」

目が点になってるんだけど。大丈夫?

ふぁには別に、自分がふぁにだってことを隠しちゃいない。

ふぁにという人格が表に出てきたからというもの、このことを妹尾家の家族に話したことはなかったが。

でも、別にふぁには、隠すつもりなんて全くなかった。

何も恥じるようなこと、してないからな。

ふぁにとほたるのことを、混同してもらっちゃ困る。

同じ身体を共有する、大事なお友達ではあるものの。

あくまで、ふぁにとほたるは他人だからな。

家族であり、友達であり、誰よりも近い場所に居る理解者であり…。でも、同一人物ではない。

「どういう…こと?あだ名のつもり…?」

「…あんたさん、本当に何も気づいてなかったんだな」

ふぁにとほたるが、入れ替わっていることに。

別に教えなくても良いんだけどな…。変に詮索されたくないし。

「気づいてないってどういうこと?作り話をしてるんじゃないでしょうね?」

「作り話な訳あるかよ」

「ちゃんと話して。一体どういうこと?あなたがほたるじゃないなら、ほたるは何処なの?」

「死んだよ」

ふぁには、きっぱりとそう答えた。

この時の、ほたるママの顔。

ほたるのことなんて、味噌っかすに扱うだけで、全然興味ないんだと思ってたよ。

だけどその顔を見ると、一応ほたるのことを気にかけてはいたんだな。

それとも、ただ気が向いただけか?

…ま、どっちでも良いけど。