神に選ばれなかった者達 後編

そっか。

あいつら、ふぁにが厨房に隠れてたり、患者に勝手に水分摂らせている間に。

着実に、バケモノ退治を続けてたんだな。

それは良いことだ。

じゃ、ふぁにも負けてらんないな…。

…と、思ったのだけど。





…その時。

「…あんた、何やってるの?」

「…は?」

ガラケーの画面から目を離して、声のした方を振り向くと。

そこには、妹尾家の奥さん…ほたるのママが、疑わしげにこちらを見ていた。

なんだ、いつの間にか帰ってきてたのか。

…見られちゃったな…。

…ま、見られちゃったもんは仕方ないな。

「そこで何やってるのよ?まさか、また何か…」

「ちょ、今話しかけないでくれよ」

「見せなさい!」

ほたるのママは、何を思ったか。

ふぁにが盗みでも働いてるんじゃないかと、ほたるママはつかつかとこちらに歩み寄り。

ふぁにが右手に持っていたもの…消毒液…を、床に叩き落とした。

ほたるママは、てっきりふぁにが、ほたるのように金銭を窃盗したんだと思っていたのだろう。

床に転がった消毒液を見て、虚を突かれたようにポカンとしていた。

「え…?」

…え、じゃないんだよ。

消毒液、溢れちゃったじゃないか…勿体ない。

ふぁには、床に落ちた消毒液を拾い上げた。

いたたた…今、指痛いんだから、余計な仕事させないでくれよ。

「あんた、一体何をやって…。…えっ…!?」

「…今度は何だよ?」

「な…何なの?その指…」

…指?

…あぁ、指ね。

ほたるママは、ふぁにの折れ曲がった左手の指3本を凝視して、目をまんまるにしていた。

ふぁには、この程度の怪我、夢の中で何度も経験してるから、どうってことないが。

見慣れてなかったら、結構グロい光景だよな。

「一体何をしたの…!?」

ふぁにが悪いことした、みたいな言い方しないでくれよ。

ふぁには被害者なんだよ。被害者。

「何をした、も何も…。やったのはあんたさんの娘さんだよ」

「え?」

「なんか、彼氏にフラレたらしいよ…。その腹いせに、ドアでバチンッて…。…ったく、乱暴なことするよなぁ…」

そんなだから彼氏にフラレるんだろ、って娘さんに言っといて。

「娘って…お姉ちゃんのこと?」

「うん。ほたるのお姉ちゃん」

「ほたるの…ってどういうこと?自分の姉でしょ」

いや、ほたるのお姉ちゃんだよ。

ふぁには他人だから。