神に選ばれなかった者達 後編

時間にすれば、ほんの数分程度の出来事。

だけどふぁににとっては、めちゃくちゃ長い時間のように感じられた。

「…はー…」

…ようやく、3枚全部引っ剥がしたぞ。

畜生め。これ、どうすりゃ良いんだよ。

消毒…すべきだよな?めちゃくちゃ滲みそうだけど…。

…はぁ。

これ以上の治療は、押し入れの中じゃ出来そうになかった。

ふぁには押し入れを出て、救急箱を取りに行くことにした。

問題は、妹尾家の救急箱は、リビングに置いてあるということである。

つまり、まだほたるのお姉ちゃんがリビングにいるかもしれない、ってこと。

さすがに、二撃目は遠慮したいぞ。

抜き足差し足で、リビングに向かうと。

室内の電気が消えていた。話し声もしない。

「…」

忌々しいリビングのドアを開けて、そっと中の様子を伺う。

…誰もいない。

どうやら、ほたるのお姉ちゃんは外出したか、二階の部屋に戻ったらしい。

やれやれ。命拾いした気分だ。

ふぁにはリビングに入って、電気をつけた。

鬼の居ぬ間に洗濯、じゃないが。

家族の居ぬ間に治療、だな。

ふぁには遠慮なく、救急箱を使わせてもらうことにした。

「えーと…。これが消毒液…。こっちが包帯…」

お、ガーゼも見つけた。

なんだ。意外と必要なもん、揃ってるじゃん。

まぁ、この家、子供が多いからな。怪我は日常茶飯事。

だから、治療道具は豊富に揃えているのかもしれない。

絆創膏も、大中小、3種類の大きさで揃えてやる。

「お…良いもの見つけた」

鎮痛剤じゃん、これ。

こんなもので指の痛みが消えるのかは分からないが、何粒か拝借して、飲んでおこう。

箱ごと持っていきたいところだけど、あんまり持っていくと、持っていったことがバレるからな…。

鎮痛剤を二粒ほど、水無しで飲み込み。次に指の手当てを始めた。

まったく…我ながら痛々しい傷だよ。

今日は本当についてない。

良いことないなぁ…と、思っていた矢先。

「…ん…?」

指先に滲みる消毒液の痛みを、必死に耐えていると。

ポケットの中に入れていたやっすいガラケーが、ぶるぶると痙攣していた。

何だよ。こんな時に。

痛みを紛らわせる為に、ふぁにはガラケーを取り出した。

すると、『処刑場』が起動されていた。

ってことは…誰かが書き込みを。

「…おっ…」

それは、仲間達からの報告だった。

なんと、夢の中大病院の地下、三階、二階をそれぞれ攻略したと。

今夜、一階にいるふぁにのもとに合流する、とのことだった。

そう。この朗報をふぁにが知ったのは、この日だったのである。

…。

…もうちょっと、せめて昨日だったら良かったのに。

ぶっちゃけ、今消毒液が痛過ぎて、それどころじゃねぇや。