神に選ばれなかった者達 後編

外で遊んでる時ってさ、あっという間に時間が過ぎるじゃん?

だけどさ、熱が出て寝込んでる時とか、身体の何処かが物凄く痛い時って、なかなか時間が過ぎないよな。

随分寝てたような気がするけど、実は10分くらいしか経ってませんでした。とか、結構ザラにあると思うんだが。

今のふぁに、まさにそういう状態。

乱暴なほたるのお姉ちゃんに、ドアで指を挟まれてから、はや二時間。

この二時間が、ふぁににとっては地獄みたいに長かったよ。

いくら、夢の中で鍛えているとはいえ。

しかも、この指。

「…うわぁ…」

改めて見ると、めちゃくちゃキモい。

これ、本当に自分の指か?って思うくらい。

歪な形にぼっこりと腫れて、相変わらず爪も浮いてしまってる。

…これ、爪、剥がした方が良いかもな。

放っといたら、どんどん化膿していくだろ。多分。

「…」

…よし。

意を決したふぁには、自分のハンカチを手に取って、口の中に押し込んで噛んだ。

そして、試しに怪我してない方の右手で、患部の指の爪を、そっと、出来るだけそっと触ってみたところ。

「…ぐっ…」

刺すような痛みと共に、グラグラの爪がズレた。

…やっぱ駄目だ、これ。引っ剥がした方が良いや。

地獄だなぁ…これ。

せめて、ピンセットとかあれば良いのに…。

あるのは、頼れるのは自分の手だけ。

…良いよ、仕方ない。

もし、ふぁにが途中で耐えられなくなったとしても。

その時は、次の誰かがやってくれるだろう。

ふぁには再び、強くハンカチを噛んで。

右手の指で、患部の爪を摘み、それを引っ剥がした。

ピリッ、と繊維が千切れるみたいな可愛い音がして、爪が剥がれた。

手応えは、意外と小さなものだった。

剥がれかけのシールを引っ剥がしたようなもの。

だけど、指の先から発生した痛みは、耐え難いほど強烈だった。

痛みには慣れているふぁにでも、思わず生理的な涙が溢れてきた。

いてぇ、畜生。

普段見ることないだろ。爪の下の肉って。

見ない方が良いぞ。多分一生モノのトラウマになるから。

そこから、ぷつぷつと赤い血が滲み出した。

指先の傷って、大抵はちっちゃいものなのに、何でこんなに痛いんだろうな。

膝擦りむいた時より、紙で指を切っちゃった時の方が痛く感じる、ってこと、ない?

手のひらには色んな神経が集中してるって言うけど、そのせいなんだろうか。

まぁ、今のふぁには、紙で指を切っちゃった…どころの怪我じゃないけど。

普通に骨、折れてるけど。

しかも恐ろしいことに、この一枚だけじゃ済まない。

まだ、あと中指と薬指も残っている。

こっちも爪、グラグラで今にも剥がれそう。

痛みを必死に堪えながら、ふぁにはセルフ爪剥ぎ拷問に耐えた。

いっそ耐えられなくなれば良いのになぁ、なんて思いながら。