神に選ばれなかった者達 後編

こうなってはもう、食事どころじゃなかった。

食欲なんて、ドアの外に吹き飛んでいってしまったよ。

ふぁには、ズキズキと痛む指を庇いながら、自分の部屋…もとい、定住地の押し入れに戻った。

あぁ、ここに空音の、のぞみちゃんがいてくれたらなぁ。

指3本くらい、彼女の血をちょこっと垂らすだけで治っただろうに…。

…って、それは夢の中の話であって、現実じゃないんだっての。

現実は、時に夢の中よりも残酷である。

…子供みたいに痛がっていても、仕方がなかった。

自分の不幸を呪いつつ、いつも通り、痛みに耐え忍んだ。

…まったく、ふぁにばっか酷い目に遭うよなぁ。

「…おーい。ほたるー…」

脂汗をかきながら、ふぁにはほたるに話しかけた。

この身体の奥底で、あんたさんも、同じ痛みを共有してるんだろ?

だったら、出てきてくれよ。

「なぁ、ふぁに、いっつもあんたさんに代わって痛みを引き受けてんだから…」

君の耐えられない痛み、ふぁにが耐えてるんだからさ。

「たまには、ふぁにの痛みを代わってくれないかな…」

そういうの全部共有してこそ、ルームシェアの同居人というものだろ。

同居人のふぁにが苦しんでるんだから、ちょっとくらい心配してくれても良くない?

大体ふぁに、ほたると間違えられて殴られたり、指挟まれたりしている訳で…。

「大丈夫?ごめんね」くらい言ってくれても良くない?

…しかし。

「…。…駄目か…」

相変わらず、ほたるは目を覚まさない。

居留守ですよ、居留守。

おーい、居るの分かってんだぞ…。出てきてくれよ。

だが、ほたるが出てくることはない。

…そりゃ、まぁそうだよなぁ。

昔から、最初から…ふぁにとほたるは、そういう関係だった。

ほたるが耐えられないから、ふぁにが生まれた。

だから、ふぁにも耐えられなくなれば良いんだ。

そうすれば、今度はふぁにの代わりが生まれることだろう。

耐えられなくなれば新しい人格が、その度に生まれ、増えていく…。

…つまり、ふぁにの代わりはいくらでもいるってことだ。

「…はぁ、ったく…」

それなら、さっさとふぁにの次が生まれてくれれば良いんだけどな。

誰だってこんな痛み、辛い人生、体験したいものじゃないんだから。