神に選ばれなかった者達 後編

自分でも、やべーこと言っちゃったなとは思った。

でも、紛うことなく本心だった。

しかしその本心は、案の定、ほたるのお姉ちゃんを逆ギレさせた。

「あんたに同情されたくないわよ!」

ごもっとも。

でも、リビングで別れ話をするあんたさんも悪い。

ここはお互い様ということで、何事もなかったように、

…そんな訳にはいかなかった。勿論。

心の底から馬鹿にしているほたる(中身はふぁに)に、馬鹿にされるなんて。

プライドの高いほたるのお姉ちゃんに、耐えられるはずがなかった。

「出ていきなさいよ!」

そう叫ぶなり、ほたるのお姉ちゃんはあろうことか、リビングの引き戸を思いっきり、バチンッ!と閉めた。

扉に手をかけていたふぁにの左手の指に、凄まじい激痛が走った。

普段は、夢の中でしか体験することのない類の激痛だった。

「いっ…!」

これは洒落にならなかった。

思わず、その場に一歩、二歩と後退りした。

麻痺したようにジンジンする左手の指を、右手で庇いながら。

…やば、脂汗が。

この種の痛みは、よく知っている。

そりゃ、巨大なミキサーにかけられて全身を粉砕される痛みに比べれば。

指の一本や二本千切れる痛みなんて、どうってことはない。

ただしいつもと違うのは、ここは死ぬことで無限に命がリセットされる夢の中、じゃなくて。

一度肉体を失ってしまったら二度と再生しない、現実だということだ。

マジで指、千切れたんじゃないかと思ったが。

幸い、指は繋がっていた。

おー良かった良かった。さすがに指がなかったら、ヤバい組織にいた人かと誤解されちゃうからな。

…って、良かった、なワケないだろ。

指は千切れてなかったけど。

でも、左手の人差し指と中指、それから薬指の3本が、潰れて明後日の方向を向いていた。

かろうじて無事なのは、小指と親指だけ。

明らかに折れてるよな?これ。もしかしなくても折れてるよな?

冗談じゃない。

聞きたくもない別れ話を聞かされた挙げ句、因縁をつけられて、指を3本まとめて骨折させられるなんて。

ふぁには無罪だろ。どう考えても。

爪が三枚ともぶわっ、と浮き上がって、ちょっとでも力を入れたらペリッと剥がれそうだった。

「あ〜…。…クソッ…」

何してくれてるんだ、畜生めが。

夢の中じゃないんだぞ、ここは。

これが夢の中だったら、さっさとミキサーに飛び込んで、苦痛を一瞬で終わらせ。

「死に戻り」することで、無傷の身体に戻れるのに。

現実じゃ、そうは行かない。

なんて厄日だ。

朝からほたるパパにぶん殴られ、頭に瘤を作って。

で、今はこの始末。

毎日のことだから痛みには慣れているけど、でも限度ってものがあるからな。