神に選ばれなかった者達 後編

もう、これだけで最高に嫌な気分だったんだけどさ。

問題は、この後だった。

お昼が近づいてきて、そろそろ何か食べようかなと、再びキッチンに向かった…のが、良くなかった。

妹尾家のキッチンは、リビングを通らないと辿り着けないのだが。

そのリビングから、非常に不穏な会話が聞こえてきたのである。

「…ちょっと、それどういうこと?」

…ん?

この声は…ほたるのお姉ちゃんだな。

妹尾家の長女だ。

「何それ?…ふざけないでよ!そんな理屈が通じると思ってるのっ?」

…なんか、一人で喚いてんだけど。

大丈夫?お姉ちゃん、学業のストレスでおかしくなったか?

心配になったふぁには、そっとリビングの様子を伺った。

こういう時、気配を押し殺して遠目から観察、及び立ち聞きする技術においては、夢の中で鍛えまくっている。

その素晴らしく洗練された腕前で、そーっとリビングの様子を見てみると…。

これでもし、お姉ちゃんが鏡に向かって喚いていたら、ふぁには今すぐピーポー車を召喚するつもりだったが。

ほたるのお姉ちゃんは、スマホを片手に髪を振り乱して叫んでいた。

どうやら、電話中であるらしい。

あー、成程。電話してたのね。

しかし、それは普通の通話ではなかった。

ほたるのお姉ちゃんは、泣きながらスマホを握り締めている。

何だろう。多分修羅場に直面しているのは事実だ。

「ちゃんと説明してよ。どういうこと?…何それ?言い訳しないでよ!!」

「説明して」と自分から頼んだ癖に、説明されると逆ギレしてんのか?

あの親あってこの娘、って感じするなぁ。

「どうして、急にそんなこと…。違うでしょ!本当のことを言ってよ!」

…。

「だからっ…!違うでしょ!…何で駄目なのよ?そんなの最初から分かってたことでしょ!?」

…。

「じゃあ何よ!私のことは遊びだったってワケ?最初からそのつもりだったの!?」

…。

「またそれなの?受験なんて言い訳でしょ!他に好きな女が出来たんでしょ。あのユミって女…」

…。

「何よ!知ってるんだから。ユミって女とカラオケ行ったって…。…はぁ!?そんな言い訳通用すると…ちょっと!待ってよ!」

…。

「何よっ…何よ、何よっ!裏切り者っ…。畜生、畜生、畜生っ…!」

どうやら、ブチッと通話を切られてしまったらしく。

ほたるのお姉ちゃんは、スマホを乱暴に床に叩きつけ。

「畜生」を連呼しながら、ソファのクッションを、腹いせにボフッ、ボフッと殴った。

…あー、うん。

…なんかふぁに、すげー修羅場に迷い込んじゃったみたいだな?