神に選ばれなかった者達 後編

ふぁにの一日の最初の不幸は、鍵を開けられ、押し入れから出た瞬間に始まった。

いつも通り押し入れから這い出して、やれやれとばかりに伸びをした。

さぁて、学校に行くか…と、言いたいところだが。

なんと、今日は土曜日である。

つまり学校は休みなんだな。素晴らしい一日だ。

…まぁ、学校…行ってる時の方が自由に過ごせるから、そっちの方が良いんだけどなぁ…。

休みの日に気を抜いてると、ろくな目に遭わないという経験則が…。

…とりあえず、喉渇いたから、水でも飲もう。

夢の中でカラッカラに渇いた人に会ったせいか、なんかふぁにまで喉が渇いた気がする。

水分は大事だぞ。

押し入れから出たふぁには、まず真っ先にキッチンに向かった。

今日は土曜日だが、朝からほたるママの姿は見えなかった。

…どっか、出掛けたのかね?

そういや、弟の姿も見えない。

ま、何でも良いや。

妹尾家の家族が何処で何をしていようが、他人であるふぁにには関係のないこと。

…とは、言っていられなかった。

キッチンに向かう扉を開けると、丁度そこで、ほたるパパと鉢合わせした。

思わず「げっ」と言いそうになったのを、必死に堪えた。

今日は土曜日なのに、ほたるパパはスーツ姿て、仕事用のカバンをお持ちだった。

どうやら、これから出勤するらしい。

それはまた…どうも。休日出勤お疲れ様です。

しかし、休日出勤で気が滅入っているところに。 

朝っぱらから、大嫌いな息子であるほたる(しかし、中身はふぁに)と、偶然とはいえ、がっつんこして。

ただでさえ不機嫌そうな顔だったほたるパパが、目を吊り上げた。

げ、これはヤバい。

これは経験上、いち早く踵を返して逃げ帰るべきだった。

しかし、その判断は遅かった。

ほたるパパは、休日出勤に対する怒りの一撃を、ふぁににぶつけてきた。

こめかみの辺りをゴッ!と殴られ、ふぁには思わずその場によろけた。

いっ…たぁぁ…。

これ、家庭内暴力だぜ…。

「退け(どけ)」

イライラした様子で、そう吐き捨てられた。

あのな、退けって言われたなら退けるから。

いちいち殴らなくても。

容赦なく殴られたこめかみが、ズキズキと痛む。

思わず顔をしかめたが、ほたるパパは「ふんっ」と鼻を鳴らし、つかつかと廊下を歩いていった。

…畜生。よくもやりやがったな。

これが夢の中だったら、射殺してやるところだったよ。