神に選ばれなかった者達 後編

器を溢してしまった患者は、右手をぶんぶんさせて喚いていた。

人間ミックスジュースを落としたのが、余程悔しいらしい。

あんなものが飲みたかったのか?…まぁ、あれが唯一の食事なんだったら、無理もないかもしれないけど…。

…しかし。

本当の阿鼻叫喚は、この後だった。

患者達は誰も、あっという間に、貪るように食事を終えてしまった。

それでもまだまだ足りないとばかりに、右手を振り回して抗議していた。

それは、まさに飢えた獣の呻き声だった。

あんなに貪って食べていると、気持ち悪い人間ミックスジュースがなんか美味しそうなスープに見えてくるんだから、怖いよな。

空腹は最高のスパイス、って奴だろうか。

だからって人間のスープは御免だが。

シーツに食事を溢してしまった患者なんて、鎖をいっぱいに伸ばして這いつくばり。

シーツにむしゃぶりついて、染み込んだ食事を少しでも吸おうとしていた。

うわぁ…。完全にホラー映画だぜ、これ…。

絶対、食事の量足りてないだろ。

もっとあげれば良いのに…。

しばらくすると、さっきの黒衣人間が帰ってきて。

飢えた叫びをあげる患者を完全スルーして、再び右手を鎖につないでいた。

食事の時だけ外されて、他の時間は常に拘束され続けるらしい。

患者達は鎖に繋がれることを嫌がって、腕を精一杯振り回しながら、言葉にならない声をあげた。

だが、一切の容赦も情けもない。

あっという間に再び縛り直されて、やれやれ終わった、と去っていく黒衣人間。

残された患者達は、悲痛な叫び声をあげるばかり。

…なんか、そろそろ見るに耐えなくなってきたんだけど。

もうベッドの下から出ても良いかな?

「よいしょ、っと…」

あの黒衣人間が意外と鈍感で、助かったよ。

バレずに済んだ。

それに、患者には申し訳ないけど、この人達が拘束されているのも、ふぁににとっては都合が良い。

うっかり襲いかかってこられたら、洒落にならないからな。

だって、こんなに飢えてるんだぜ?

もうカメムシでも良い!!とばかりに、頭からバリバリ食われるかもしれないじゃん。

案の定、ふぁにの姿を見た患者達は、両の目を大きくかっ開き。

「ゥゥゥズ!ィィィミィィィィ!!」

めっちゃ叫んでる。

お前を食わせろ!って言ってるんだろうか。

ごめんな。ふぁに、カニバリズムの趣味もないし、カニバリズムの被害者になる趣味もないから。

悪いけど、安全圏から様子を観察させてもらうぞ。