神に選ばれなかった者達 後編

音を立てないよう、扉を閉め直し。

それから、更に抜き足差し足忍び足で、そーっとベッドに歩み寄る。

幸い、患者は目を覚まさなかった。

「…」

「…ゥゥゥ…ゥズ…。…ゥズ…ミ…」

…すげー気色悪い寝言を呟いてんな。

どんな夢を見てるんだか。

でも、多分愉快な夢じゃないことは確かだ。

その患者、眉間にめちゃくちゃ皺を寄せて、シーツを固く握り締めていた。

歯の隙間から、苦しそうな吐息が漏れていた。

いかにも、具合が悪そうだ。

そりゃこんな部屋にいたら、誰でも具合が悪くなるだろうよ。

しかも、この女性患者達、いずれも。

腹が。

下っ腹が、ぼこりと大きく膨らんでいる。

まるで風船みたいだ。

一番小さくても、臨月の妊婦くらい。

一番大きいのは…でっかいビーチボールが腹の中に収まってるみたい。

…腹水でも溜まってんのか?

こりゃ苦しいだろうよ。素人目でも分かる。

ちゃんと治療…してもらってないんだろうか。

何の為の病院なんだか…。

患者は脂汗を滲ませ、苦しそうに呻いていた。

そしてふぁには、病室に鍵がかかっていなかった理由を知った。

必要がないからだ。

いずれの患者も、両手両足を鎖で繋がれていた。

これじゃあ、立ち上がるどころか、起き上がるどころか。

自分で寝返りを打つことさえ出来ないじゃないか。

ひっどいもんだ。

これじゃ、とても病院じゃなくて…。

…と、その時だった。

廊下の向こうから、ガラガラとカートを引き摺ってくる音が聞こえてきた。

どうやら、厨房で作った料理を配る時間がやって来たようだ。

やべ。

ふぁには、素早く病室内を見渡した。

隠れるところ…隠れるところ、なんて一つしかない。

ベッドの下だ。

畜生。ふぁには思春期の子がベッドの下に隠したエロ本かよ。

非常に不本意だけど、他に都合良く隠れる場所なんてない。

もし見つかったら…その時は南無三ってことで。

ふぁには、素早くベッドの下に身を滑らせた。

狭い上に埃っぽいけど、我慢するしかない。

病院だろ?ここ。掃除くらいちゃんとしてくれよ。

しかし、文句を言える状況ではなかった。

ガラッ、と勢い良く病室の扉が開けられた。

思わず、ふぁには身を固くした。