神に選ばれなかった者達 後編

で、そんな感じでしばらくの間、厨房での調理の模様を毎晩眺めて。

他にも色々、気づいたことや気になることはたくさんあったんだけど。

それでも毎晩のように見ていると、さすがに新しい発見がなくなってきた。

…うーん。ちょっと見飽きてきた。

ちなみに、これは後になって知ったことだが。

この頃は丁度、いくらふぁに達が呼びかけても、響也やみらくが『処刑場』に現れず。

あいつら大丈夫なのかな、とやきもきしていた時期だった。

そんなこともあって、ふぁには一刻も早く、このフロアを何とか攻略しなければならないと焦っていた。

この悪夢の中で、焦りが禁物だということは百も承知だ。

だけど、このまま厨房の様子をひたすら見守っていても、得られる情報は多くなさそうだった。

そこでふぁには、厨房以外の場所を見て回ることにした。

この一階には、大きな厨房の他、数は多くないが病室もあった。

病室には、入院患者…ならぬ、入院バケモノ達が毎日、治療に励んでいた。

つまり、この厨房で作った食事を実際に食べている人達だ。

…おぇ。

果たして患者共は、毎日自分達が人間ミックスジュースを飲んでいることを知っているのだろうか。

知らない方が良いと思うけどな…。

そこのところを確かめる為に、ふぁにはある日、行動を起こすことにした。

とは言っても、自分の姿を現すのは危険が過ぎる。

そこで、そーっと隠れるようにして、病室に侵入することにした。

病室の扉には、鍵がかかっていなかった。

これは意外だった。

窓とか、あまりにもガッチリ施錠しているから。

てっきり、病室もそうだと思ってたのに…。…あっさり。

でも、ふぁにとしてはその方が有り難い。

「…お邪魔しまーす」

ふぁには声を出さず、口パクでそう宣言してから。

病室の扉を、ほんのちょっと。ほんのちょっとだけ開けた。

突然ガラッと開けたら、びっくりして悲鳴を出されるかもしれないだろ。

しかし、その必要はなかった。

「…」

部屋の中には、簡素なベッドが六つほど、並べて置いてあるだけだった。

窓はなくて、お見舞い客用のパイプ椅子も、入院中私物を入れる棚も、ゴミ箱も、何もない。

ただ、簡素で小さなベッドがあるだけの、こじんまりとした部屋。

…これが病室?

何だか、えらく気が滅入る病室だな。

こんなところに入れられてたんじゃ、治るものも治らないだろうに…。

そのベッドの上には、黒い病院着を着せられた女性らしい患者が寝ていた。

どうやら就寝中であるらしく、目をぎゅっと閉じていた。

他の患者も同じだ。

起きている患者は一人もいないようだった。

…ごめんな、寝てるところに。

でも、お陰で入ってもバレなさそうだ。

それじゃ、お邪魔します。

ふぁには病室の扉を大きく開けて、堂々とお邪魔させてもらった。

現実で、知らない他人の病室に侵入するなよ。余計なトラブルの元だからな。

ふぁにとの大事な約束だ。