神に選ばれなかった者達 後編

…しまった。携帯電話を見ながらニヤニヤしてるところ、見られた?

「お、おはよう。秋本君…」

「何か良いことでもあったの?」

えっ?

「何だか嬉しそうだったから…」

あぁ…やっぱり見られてた。

恥ずかしい。

「う、うん…ちょっとね」

「友達から連絡?」

「えーっと…まぁ、そんな感じ。ちょっと…ネットの掲示板で…」

「ネットの?…空音さんって、そういうの興味あるんだ」

興味がある…って言うか。

否応なく、携帯電話に勝手にインストールされてたのよね…。

「それで、空音さん…今日は図書室、来るの?」

「え…いや、どうしようかな…」

今日は…特に、何も考えてなかったんだけど…。

「先月入ったばかりの本で、おすすめのものが何冊かあって…。空音さんに読ませてあげたいって思ってるんだけど」

「え、あ、そうなの?」

「うん。空音さん用に取り置きしておくから、いつでも借りに来てよ」

えぇ。凄いVIP待遇。

良いのよ。私の為に取り置きなんてしなくても…他に読みたがってる人がいたら、その人に先に読ませてあげて。

でも、秋本君の好意は素直に嬉しかった。

「分かった。また今度行くわね。…ありがとう」

「どういたしまして」

秋本君は爽やかに笑って、手を振って立ち去った。

…ふぅ。

携帯電話を鞄の中にしまって、私も教室に向かおう、としたら。

「の、ぞ、み〜!見てたよ!」

「うわっ」

背後から忍び寄るように、女友達が抱きついてきた。

驚いて振り向くと、そこにはこの間『ブラック・カフェ』で誕生日祝いをした、りーちゃんがいた。

「び、びっくりした…。…忍者かと思ったじゃないの…」

「え、忍者?」

「…何でもないわ」

夢の中であんなものを見ているせいね。ある種の職業病みたいなものだ。

私相手に、不意打ちはやめた方が良いわよ。

バケモノだと誤解して、思わず殴り返しちゃうかもしれないから。

危ないところだった。

「もう、驚かせないでよ…」

「ごめんごめん。でも、朝からイイトコ見ちゃったから、ついね」

「…イイトコ?」

イイトコ…良いとこ?

って、何よ?

「…自販機の下に100円が落ちてた、とか?」

「…そんなの全然良いことじゃなくない?」

えっ、そうなの?

自販機の下で100円玉を見つけるなんて、私にとっては青い鳥を見つけたようなものだけど。

だって100円あったら、もやしが2袋、特売だったら3袋買えるのよ?

大金だわ。大金。