神に選ばれなかった者達 後編

私は手榴弾を握り締め、高い檻のようなベビーサークルに迫った。

その中では、子供達が必死に生きようとしていた。

あと一日、一分一秒でも長くこの世に存在しようと、死力を尽くしていた。

それは、かつての自分の姿。

生き延びる為に必死だった、自分の姿…。

「…のぞみちゃん…」

みらくさんが、震える声で私を呼んだ。

多分、私も無意識のうちに震えているのだろう。

怖かった。

凄く怖かった。

爆弾を持っているのはこっちなのに、何故か自分が殺されようとしているかのような、そんな恐怖を感じていた。

…そうだよね。怖いよね。

分かるよ…私もそうだったから。

そしてきっと、本物の「空音のぞみ」もそうだった。

生きたいって切望していた。私と同じように、生きていたいと…。

だけど、現実はいつだって非情だ。

夢の中でさえそうなのだから。

私にはお兄ちゃんという救世主がいた。だから生き延びた。

でもこの子達に救世主はいない。だから死ぬ。

生きるか、死ぬか。まったく正反対の二つの事象の間には、実は大きな差はない。

生と死はいつだって紙一重で、自分がいつ、どちらに傾くか、それは誰にも分からない。

そう、神様でさえ。

…私は、選ばれた。

「選ばれない」ことに選ばれた。だから生きることが出来た。

私の生がいつまで続くのかは分からない。もしかしたら、明日には、数分後には終わっているのかもしれない。

だけど、それが私の運命なら、甘んじて受け入れる。

生きたい、まだ生きていたい、死にたくない…そう思いながら、死の恐怖に怯えながら生きていく。

これまでも…これからも、ずっと。

だから、あなた達も。




「…生まれ変わったら、今度はもっと長く生きられたら良いね」



…ごめんね、は言わない。

私は手榴弾のピンを抜き、それを檻の中に放り投げた。