神に選ばれなかった者達 後編

保育器の中に寝かされていた赤ん坊達は、一人残らず始末した。

私はほぼ見ていただけで、やってくれたのは萌音さんと李優さん。

それから、響也さんと…お兄ちゃんだ。

…非常に不甲斐ない。

「ふー。終わった終わった」

萌音さんは、すっかりひしゃげてしまった血まみれの丸椅子を、ポイッと放り投げた。

萌音さん自身も、赤ん坊の返り血がべったりとついていた。

その姿を見ていると、どうにもいたたまれなかった。

「…ごめんなさい、萌音さん」

「ほぇ?何?」

「いえ、その…。ほとんど任せてしまって…」

「?萌音がやっちゃ駄目なの?」

「え?あ、いやそうじゃなくて…」

ほぼ萌音さんに任せてしまったのが申し訳なくて。

それを謝ろうとしただけなんだけど…。

「気にするな、のぞみ。萌音を気遣ってくれてありがとうな」

李優さんが、萌音さんの代わりに私を励ましてくれた。

「あ…は、はい…」

「のぞみ。…大丈夫?」

お兄ちゃんが、私に尋ねた。

「…うん、大丈夫。お兄ちゃんも、任せっきりにしてごめんね。次こそはきっと役に立つから…」

「そんなこと気にしなくて良いんだよ」

…まったくもう。

お兄ちゃんはいつも、そればっかりなんだから…。

…しかも。

「のぞみ…。次こそ、手を出しちゃいけないよ。部屋の外で待ってるんだ」

いつもより強い口調で、お兄ちゃんが言った。

…どういうこと?

「何でよ?私、今度こそ皆の役に…」

「駄目。…あれを見るべきじゃない」

「…」

…あれ。

それはつまり…あの保育室で飼われている子供達のことだろう。

見るもおぞましい、蠱毒の壷…。

…そうだね。正直、何度も見たいものじゃない。

だけど、逃げることは有り得ない。

お兄ちゃんが戦ってるのに、私だけ目を背けて逃げるようなことは。

「私も行く。私もお兄ちゃんと一緒に戦う」

「…のぞみ…!お兄ちゃんは、のぞみに辛い思いをさせたくなくて…」

「そんなの、私も一緒だもん。お兄ちゃんだけに背負わせることは出来ない」

これだけは譲らないからね。

さっき役に立てなかった分も、私も頑張って戦う。

私だってお兄ちゃんの力になりたい。

守られてるだけじゃなくて…。私も、お兄ちゃんを守りたい。

それは他でもない、私自身の意志。

「…たまには大人扱い、してやっても良いんじゃないか?」

「女の子って、男の子が思ってるより強いよ」

李優さんと萌音さんが、援護射撃のようにそう言ってくれた。

そうそう。その通り。

「…仕方ない、分かったよ…。でも、無理しちゃ駄目だよ。約束だからね」

「うん」

お兄ちゃんこそ。

それじゃ、私も一緒に行こう。