神に選ばれなかった者達 後編

「とにかく、皆に任せっぱなしには出来ないから。私も戦う」

「私も」

「あ、のぞみ」

「みらく…」

男性二人の制止を聞かず、ズカズカと部屋の扉を潜る私とみらくさん。

「のぞみ…。昔は聞き分けの良い子だったのに…」

「まったくだ…。みらくも昔は…」

「これが成長したってことなんだろうが。嬉しいけど、お兄ちゃんはちょっと淋しい…」

「まったくだ」

「…いそらくんはともかく、何で君まで同意してるのよ…?」

「え?」

…私とお兄ちゃんはともかく、響也さんとみらくさんは、最近の知り合いでしょうよ。

これも響也さんなりのボケなのかもしれない。

真顔だから、全然そんな風に見えないけど。

…とにかく。

私も頑張って戦わなきゃ。萌音さんと李優さんだけで全滅させちゃうよ。

えぇと…武器、武器…武器になりそうなもの…。

「何を使えば良いかな…」

「萌音ちゃんみたいに、椅子を使ったらどうかな」

と、みらくさんが提案した。

そうね。それが一番手っ取り早いかも。

私とみらくさんは、それぞれ丸椅子を手に。

赤ん坊が眠る保育器の前にやって来た。

保育器の中には、赤ん坊が寝ていた。

赤ん坊の背中に、手のひらのような形の大きな瘤が出来ていた。

それはまるで、背中に歪な羽根が生えているようにも見えた。

不気味…だけど。

…やらなきゃ。

ここで躊躇ってちゃいけない。

「のぞみ、無理しなくても…」

と、お兄ちゃんはなおも私を止めようとしたけれど。

「大丈夫…。…やる」

ついに意を決して、丸椅子を振り上げ。

渾身の力で殴りつけた…の、だけど。

「はぇっ…?」

丸椅子で叩きつけても、ガッ、と痛そうな音がしただけで。

保育器は、びくともしていなかった。

…う、嘘でしょ。

手加減、したつもりはなかったんだけど。

「うっ…手がジンジンする…」

「任せて、私も…。…えいっ!」

みらくさんが、丸椅子を振り下ろしたけれど。

僅かに狙いが外れて、保育器のモニターを少し傷つけただけで、保育器の中身は無事。

「うぅっ、いったぁ〜…!反動でジンジンする…」

「よく見ると、これ、結構硬いね」

お兄ちゃんが、コンコン、と保育器のガラス部分を指の関節でノックした。

本当だ。これ、こんなに硬いの?

萌音さんあまりにも、プリンでも潰すように、あっさりとぺしゃんこにしているのに。

私とみらくさんは、たったこれだけのことで音を上げている。

…情けないにも程があるでしょ。