神に選ばれなかった者達 後編

さぁ、これで準備は整った。

私も覚悟を決めなくては。

「よし…。…私も、」

「のぞみ」

えっ?

意気揚々と、部屋の中に入ろうとしたのに。

その前に、お兄ちゃんが私を制止した。

「何?お兄ちゃん…」

「のぞみは入っちゃいけない。外で待ってるんだ」

「…!」

…何を言い出すの。お兄ちゃん。

しかも、お兄ちゃんのみならず。

「みらく、お前もだ」

「えっ…?」

響也さんが、私と同じく部屋に入ろうとしていたみらくさんを止めた。

お互い、相棒に足止めを食らってしまった私とみらくさんは、入り口で呆然と立ち尽くしてしまった。

「何言ってるのよ、お兄ちゃん。私だって…」

「のぞみは武器を持ってないでしょう?だから駄目」

…それは。

「私は?私は何で駄目なの?私は武器を持ってるわ」

みらくさんが、自分のウエストポーチを指差して抗弁した。

そうだよ。みらくさんには、強力な手榴弾という武器が…。

しかし、響也さんは非常に冷静だった。

「手榴弾は威力が高過ぎる。それに3つしかないんだ。今夜、まだ何があるか分からないのに、今、手ぶらになる訳にはいかない」

「…うっ…」

みらくさんの手榴弾は強力だけれど、しかし3つしかないというハンデがある。

その貴重な3つを使い切ってしまったら、みらくさんは実質丸腰だ。

響也さんは、そのことを憂慮しているようだった。

「で、でも…!私だって、響也くんと一緒に…」

「そうだよ。私だって、武器はないけど…でも、お兄ちゃんと一緒に…」

私だって戦えるよ。

だって、実際。

「うーん。何か武器になりそうなものないかな…武器、武器…あ、これにしよ」

私と同じく、武器を持たない萌音さんは。

誰よりも真っ先に、率先して部屋の中に入り。

部屋の隅の方に置いてあった、丸椅子を手に取った。

その丸椅子を容赦なく振り上げて、保育器に向かってフルスイング。

ガラスが割れる音がして、保育器ごと、中の赤ん坊が、ぷちっ、と潰された。

更に萌音さんは、次から次へと、保育器ごと丸椅子で赤ん坊を叩き潰していた。

す、凄い…。剛力。

私はあんな風には出来ないけど、でも似たようなことは…。

武器のない萌音さんも、身近に武器を見つけて頑張ってるんだから。

私だけお兄ちゃんに任せて、指を咥えて待ってるだけなんて出来ない。

「やだ、私も戦う」

「私もだよ。手榴弾を使わなくても、響也くんと一緒に戦う」

私達の意志は堅い。

急がないと、萌音さんが全部叩き潰しちゃうよ。