神に選ばれなかった者達 後編

ーーーーー…その日の夜。

僕は、のぞみにもらったばかりのグレーのマフラーを首に巻いて、鏡の前に座っていた。

…見てよ、これ。

なんて可愛いんだろう。

マフラーが、じゃないよ。これをプレゼントしてくれたのぞみが。

なんて可愛らしくて、そして優しい子なんだろう。

生きてて良かった。

この間拾ったスカーフは、ゴミ箱に放り込んでおいた。

もうあんなものは要らない。

のぞみがくれたマフラーの方が、遥かに価値があるに決まってるだろう?

それにほら、あのスカーフつけてたら、のぞみに「百姓みたい」って言われちゃったし。

まぁ百姓でも何でも良いけど。

とにかくのぞみ最高。最高に可愛い。最高に素敵。

この喜びを多くの人に知って欲しくて、手始めに近所中に報告して回ったところ。

近所に住む住民達は、皆悲鳴をあげて喜んでくれたよ。

「のぞみちゃんは素敵な良い子だね」って。

その通り。お兄ちゃんもそう思います。

何故か、のぞみはその後、やたらぐったりしてたけど。

きっと、今日は放課後に『ブラック・カフェ』なる場所に行ったから、疲れてるんだろう。

そうに違いない。

お兄ちゃんは、ほくほくとマフラーを首に巻いた。

なんて温かい。

のぞみの心の温かさみたいだよ。

「お兄ちゃん、そろそろ寝る時間だよ」

と、のぞみが声をかけてきた。

「うん、分かってるよ」

「分かってるなら、そろそろマフラーは外さなきゃ…」

「嫌だ。つけたまま寝る」

「何言ってるのよ…。マフラーつけたまま寝るなんて…」

だって、お気に入りなんだもん。

「寝てる間に首が絞まったらどうするの?」

「のぞみのマフラーで首が絞まって死ぬなら…それは本望!」

「本望、じゃないわよ。そんなことで死ぬなんて、絶対許さないからね。外して」

「あぁっ…」

のぞみはマフラーに手を伸ばし、しゅるり、とほどかれてしまった。

あぁ…切ない。

でも、仕方ないか…。僕だって、のぞみを残して先に死ぬつもりはないし。

「さぁ、これからまた夢の中なんだから。気を抜いちゃ駄目よ」

「分かってる、分かってるって。のぞみ」

「もう…お兄ちゃんったら…」

大丈夫大丈夫。何が出てきたとしても、お兄ちゃんがのぞみを守ってあげるから。

…前と同じように。