神に選ばれなかった者達 後編

その後の顛末については…もう思い出したくない。

アパートに住む、在宅中だった全ての住民に、私にもらったマフラーの自慢をした後。

お兄ちゃんは満足そうに、自分の部屋に戻ってきた。

私はその後を追って、一軒一軒に謝罪して回った。

お風呂に入っている真っ最中で、素っ裸を見られた男性には、特に深く深く謝罪した。

お兄ちゃんが突撃した全ての住民に、何度も謝罪を繰り返した後。

私は、よろよろしながら部屋に戻った。

「お、お兄ちゃん…」

「あっ、のぞみお帰り!」

お帰り、じゃないのよ。

そんな爽やかな顔しないで。

お兄ちゃんは、私がプレゼントしたマフラーを首に巻いていた。

あぁ…良かった、お兄ちゃん。とっても似合うわ…。

ただ私は今、こんなプレゼントしなきゃ良かったと深く後悔しているわ。

「ありがとう、のぞみ。お兄ちゃん、凄く嬉しいよ」

「そう…。良かったわね…」

「うん。アパートの皆もそう言ってたよ。『のぞみちゃんって本当に可愛いね!』って」

そんなこと、誰一人言ってなかったけど?

皆さん叫んでたわよ。

駄目だ…。お兄ちゃんには、近所の皆さんの叫び声が、全部褒め言葉に聞こえちゃってる…。

「留守だった部屋の住民に伝えられなかったのが残念だよ」

「そんなこと…よその人に伝えなくて良いわ…」

「何を言うんだ。のぞみ、感動は共有しないと!」

感動してるのはお兄ちゃんだけで、他の人は知ったことじゃないと思うわよ。

「そうだっ!この感動をポスターにまとめて、各部屋に投函しよう」

「やめて」

迷惑だから。そんなことしたら迷惑だから。

明日から私、どんな顔して近所の皆さんに挨拶すれば良いの?

「この部屋には異常な兄妹が住んでる」って、思われているに違いない。

それなのに、お兄ちゃんだけはホクホク顔で。

「ふふ。今日は最高に素敵な一日だよ」

「…」

…近所からの評価はともかく。

こんなに喜んでいる姿を見ると、やっぱりプレゼントして良かったのかな…と、思わせてくるのだからズルい。

…明日、お兄ちゃんを無理矢理引っ張って、各部屋の謝罪に回ろう。