神に選ばれなかった者達 後編

う、嘘でしょ。何なのこの反応。

叫ぶなら、せめて人の言葉で叫んで頂戴。

いや、叫ぶのも駄目だって。

「ちょっと、お兄ちゃん!」

「のぞみ!のぞみから!プレゼント!のぞみから!プレゼント〜っ!!」

あ、人の言葉を喋り始めた…。

でも、そういう問題じゃないから。

叫ぶのが駄目なの。

だって、普通の一軒家ならともかく。ここは貧民街の安いボロアパート。

「おい!うるさいぞ!」

壁を向こうからドン!と叩く音がして、早速苦情が来た。

ほら。言わんこっちゃない。

部屋の中で叫んだら、お隣どころか、お隣のお隣のお隣辺りまで聞こえるくらい、壁も床も薄いのに。

こんな大暴れしたら、アパート中の住民が「何事か」と思うことだろう。

「ご、ごめんなさい!」

私は大声を出して、お隣の住人に謝罪した。

「お兄ちゃん、落ち着いて!近所迷惑だから!」

「のぞみからプレゼふぁぁぁぁ!!」

「ふぁぁ!?」

ちょっと、大丈夫…!?

お兄ちゃんは、私がプレゼントしたマフラーをぎゅっ、と抱き締め。

こうしちゃいられないとばかりに、アパートの部屋の外に飛び出した。

「ちょ、お兄ちゃん何処に行くの!?」

「この感動を、世界の全ての人に伝えたい!ちょっと伝えてくる!!」

「はぁっ!?」

駄目だわ。お兄ちゃんが暴走してる。

見たことのないお兄ちゃんの姿に、私はしばし呆然としていたが。

「…はっ!」

ボーッとしてる暇はない。今すぐにでも、お兄ちゃんを止めなくては。

「ちょっと、お兄ちゃん待って…!」

慌てて、お兄ちゃんの後を追いかけたが。

…時既に遅し。

「見てこれ!のぞみがくれたんだよ!」

「う、うわっ!?何だアンタ!?いきなり…」

「可愛いでしょう?マフラーが、じゃないよ。のぞみが!!」

あろうことか、お兄ちゃんはお隣の部屋に乱入。

お隣に住んでいるおじさんに、もらったばかりのマフラーを自慢していた。

お兄ちゃん。それ不法侵入だから。

兄のとんでもない所業に、思わず目眩がした。

「な、何なんだよ…!?」

突然家の中に不審者がやって来たせいで、お隣のおじさんは目を白黒させていた。

当然だよ。ごめんなさい。

土下座しても謝りきれない。

しかし、大興奮しているお兄ちゃんは、このくらいでは収まらなかった。

「さーて、次、次!」

お隣のおじさんに、散々マフラーを自慢したお兄ちゃんは。

びっくりしているおじさんを置き去りにして、再び部屋の外に出ていった。

ちょっとお兄ちゃん?次って何よ?

そ、その前に、おじさんに謝らなくちゃ。

「ご、ごめんなさいっ…!お兄ちゃんが馬鹿なことして…!」

「な…何なんだ…?」

おじさん、ぽかん。

「あ、改めてお詫びに来ますっ…!本当に申し訳ございません!」

私は何度もぺこぺこと頭を下げて、お兄ちゃんが開けっ放しにしていたお隣の玄関のドアを閉めた。