神に選ばれなかった者達 後編

少しくらい、驚くかなぁと思ったのにな。

「お兄ちゃん…。私が隠れて見てること、気づいてたの?」

「勿論気づいてたよ。このお兄ちゃんが、のぞみの気配を見逃すはずがないだろう」

ふふん、とドヤ顔。

そっか。相変わらず気持ち悪、いや、感覚が鋭いね。

「こんな時間までお仕事してるなんて…珍しいね」

いつもだったら、家に帰ってる時間なのに…。

「今日は天気が悪くて、実入りが良くなかったからね…。遅くまで粘ることにしたんだ」

「そっか…」

…それって、やっぱり私のせいだよね。

私が今日、お金を浪費してしまったから…。

その分を取り戻そうと、こんな時間まで頑張って、お仕事…。

それなのに私は、呑気にお兄ちゃんのお金で飲み食いするだけで…。

「…ごめんね、お兄ちゃん」

「え?何が?」

「私が無駄遣いしたせいで…」

「もう…大袈裟だなぁ、のぞみ。のぞみのせいじゃないよ」

お兄ちゃんは、いつもそう言ってくれる。

明らかに私のせいなのに、私のせいじゃないって…。

「それに、良いカモが釣れたからね。この時間まで粘って良かった。あれは毟り取れそうだ」

さっきのお客さんのことだよね?

「うん…そうだね。あの人はお金、落としてくれそうだね」

「粘って良かったよ」

満足そうなお兄ちゃん。

テーブルと椅子を片付け、コップの中の水は、そのまま地べたに捨てた。

それから、頭に被っていたスカーフも外した。

そして、そのスカーフを風呂敷代わりに、占い道具を片付けた。

…そのスカーフ…。

「お兄ちゃん、前からそんなスカーフ使ってたっけ?」

「ん?いや…ごみ捨て場に捨てられてたのを、汚れを洗って使ってるんだけどね」

ごみ捨て場に捨てられてるゴミを、勝手に拾って帰っちゃいけないらしいけど。

貧民街では、そんなお上品な決まりは存在しない。

私達にとってごみ捨て場とは、掘り出し物を見つける為の無料フリーマーケットみたいなものだ。

「首に巻くと温かいし、風呂敷代わりにも使えるし…。それに、スカーフつけてると何だか、占い師っぽいかなぁと思って」

…成程。

「占い師って言うか…。…お百姓さんみたいに見える…」

「えっ?」

「あ、ううん何でもない。帰ろ」

ごめん。つい本音が出ちゃった。

お百姓さんでも占い師でも、お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。