神に選ばれなかった者達 後編

気を取り直して。

「それにしても、見事な黒だね…」

「うん。格好良いけど…味はどうなんだろう…?」 

「わ、分からない…。匂いは、良い匂いなんだけどね…」

女友達は、しげしげとお皿の上の料理を見つめていた。

…何よ。皆。

あんなにノリノリで注文してた癖に、いざ実物を前にすると臆するなんて。

悪ノリで食べ物を注文するものじゃないわよ。

頼んだなら食べなさい。それが食べ物に対する礼儀よ。

「ね、ねぇのぞみ。のぞみもそう思っ、」

「え、何?」

「うわっ、飲んでる…!」

…何よ?飲んだら悪いの?

私は誰よりも先に、マグカップに手を伸ばし。

自分が注文した、ブラックホットミルクに口をつけた。

私が注文したんだから、私が飲むのは当たり前でしょ。

「のぞみ、勇気ある…!」

「よ、よく飲めるね…。黒いホットミルクなんて…」

「何だか墨汁みたい…」

黒かろうが墨汁だろうが、腐ってなければそれで良いのよ。

味なんて二の次よ、二の次。

例えこのホットミルクが墨汁味でも、焦げたような味がしたとしても、私は淡々と飲み干す自信があった。

しかし、その必要はなかった。

このホットミルク…。確かに、見た目は奇抜だけど…。

「…これ、普通に美味しいわよ?」

「えっ…そうなの?」

「うん」

平気でごくごく飲める。

変な味とか風味とか、全然ない。

むしろ、まろやかでコクがあって、普通の白い牛乳のホットミルクより美味しい。

さすが、このちっちゃな一杯で600円もするだけあるわ。

お兄ちゃんにも飲ませてあげたかったな…。

「ほんとに?ほんとに飲めるの?美味しい?」

「黒ごまの味とかしない?」

「しないわよ…」

黒ごまで黒くしてる訳じゃないでしょう。…多分。

「何よ…。疑ってるの?そんなに怖いなら、私が飲むから。そこ置いといて」

「い、いや。飲む、飲むよ」

私が脅すと、女友達はそれぞれ、マグカップに手を伸ばした。

そして、恐る恐る口をつける。

すると。

一口飲み下した瞬間、全員の目が輝いた。

「凄い、これ美味しい…!」

「本当だ。他のカフェの飲み物より美味しいかも…」

「これヤバい。ハマりそう…」

さっきまで、あんなにビビっていたのは何だったのか。

皆、ごくごくと飲み始めた。

見た目は奇抜だけど、味もちゃんと美味しいのね。

見た目にもこだわり、味もこだわる…。きっと、並々ならぬ企業努力の賜物なんでしょうね。