神に選ばれなかった者達 後編

どうせお茶を飲むのなら、そこらの自販機で買えば良いじゃない。

でも自販機だと割高だから、スーパーの激安缶ジュースを人数分買って、皆で飲めば良いじゃない。

何なら、私一人だけ水道水でも良いわよ。

…と、言いたいところだが。

私達がやって来たのは…。

「…な、何なの?ここ」

「あ、のぞみ、ここ初めてなの?」

「めっちゃ良いお店なんだよー」

ここが初めて、って言うか。

そもそもカフェそのものが初めてなのよ。

しかし、そのカフェはあまりにも異質だった。

私の予想だと、裏路地にある古い喫茶店…みたいなお店だと思ってたんだけど。

全然違う。

真っ黒なの。

お店の外装、内装、窓やカーテンや絨毯、店員さんの着ているお揃いのユニフォームに至るまで。

何なら、そのユニフォームを着ている店員さんのメイクまで。

何もかも、全部が黒いの。

何?この目に悪そうなお店。

「ここ、『ブラック・カフェ』って言うんだよ」

「SNSでも人気のお店なの」

謎のドヤ顔で、女友達が教えてくれた。

ブラック・カフェって…。名前、そのまんまね。

こんなお店が人気店だなんて、世も末だわ。

しかし、人気店なのは本当らしく。

店内は、ほぼ満席状態。

私達は、運良く席が空いていて座れたけれど。

タッチの差で、後から入ってきたお客さんは、名前を書いて席を待たされていた。

…あぁ、何だか悪いことをしてしまった気分だわ…。

「さーて、何頼もっかなー」

と、女友達はメニュー表を手に取った。

当然だけど、このメニュー表も真っ黒。

テーブルもソファも、テーブルの上に備え付けられているミルク入れや砂糖入れも、全部黒いの。

そっと、その砂糖入れの蓋を開けてみると。

なんと、四角い角砂糖まで黒かった。

何なのこれ。…黒糖…?

このお砂糖、いくらなのかしら。

こんな「ご自由にお取りください」みたいな置き方をしていたら、うっかり盗まれたりしないの?

私は、まさかこの砂糖とミルクが無料だとは知らなかった。

それどころか、砂糖だけじゃなくてミルクまで黒いことを知らなかった。

知らない方が幸せなこともある。

「…のぞみ?何ぼーっとしてるの?」

「えっ?な、何?」

「注文。どれにする?」

女友達が、私にメニュー表を見せてきた。

…運命の瞬間。

…よし。可能な限り、一番安いものを頼もう。

しかし。

そのメニュー表を見るなり、私の目玉は飛び出した。

「たっ…!」

かぁぁぁい!何これ?何この値段!?

思わず叫びそうになったのを、必死に堪えなきゃいけなかった。