神に選ばれなかった者達 後編

「本当は五階建てなのか…?それとも、屋上があるとか…?」

「…」

…それは分かんないね。

この子に聞きたいところだけど、言葉通じないんだよな…。

「ねぇ、三階。萌音達三階に行きたいの。どのボタン押したら良い?」

「…ダズハタシニウヨムゾノ…レクテシルユウモ…」

「そうじゃなくて、三階。三階はどのボタン?」

「…ハケダチノイ…レクテケスタ…」

「…」

駄目だ。会話が通じない。

うーん…。三階ってことは、下から三つ目のボタンかな?

それとも、上から二つ目を押せば良いの?

でも、夢の中でのエレベーターが、現実のエレベーターと同じボタン配列とは限らないよね。

言葉が通じない以上、ここからは勘に頼るしかないか…。

「よし、こうなったら…」

「?どうするんだ?萌音」

「ど、れ、に、し、よ、う、か、な。て、ん、の、か、み、さ、ま、の、い、う、と、お、り…」

「おい。何だその適当な決め方は」

「よし、李優。これにしよう」

最後に指が止まったボタンを、ポチッと押す。

「あ、おい。もうちょっとよく考えてだな…」

「お、動き始めたよー」

「あぁ、ったく…」

良いんだよ、李優。何階に止まったって。

仮にそこが一階なら、ふぁに君に会えるし。

二階なら空音兄妹に会えるし。

三階なら、無事に目的地に到着することになる。

まだ見ぬ場所だったら…それはそれで良し。

とにかく、今のフロアから移動することが大切なんだよ。

…それと。

「李優、その人」
 
「ん?…あぁ…」

萌音は、ぐったりとして命乞いを繰り返すくノ一さんを指差した。

すると、李優はそのくノ一に向き直り。

カチャ、と拳銃を向けた。

「…悪いな。あんたを生かしておく訳にはいかないんだ」

「!…メヤ…」

片方しか残っていない目を、大きく見開いて。

言う通りにしたじゃないか、話が違う、とでも言いたそうな顔をして。

李優が引き金を引くと、ヒュッという音がして。

一瞬にして、くノ一さんはただの肉塊になった。

…ごめんね。

でも、この夢の世界で、バケモノを一匹でも生かしておく訳にはいかないから。

利用するだけ利用して殺すのは、こちらとしても忍びないんだよ。

だけど、これが萌音達、生贄の役目なんだ。

「…」

くノ一さんが絶命したのを確認して、李優は拳銃を下ろした。

「李優…大丈夫?」

萌音がやれば良かったね。

萌音は、バケモノを殺すことに何の躊躇いも覚えないけど。

李優は優しいから、いくら相手がバケモノでも、無抵抗の相手を殺すことに罪悪感を感じているのかも知れない。

しかし。

「…大丈夫だ。俺だって、甘いこと言ってるだけじゃやってけないことくらい、分かってる」

「…李優…」

「心配させて悪かったな。さぁ、行こう」

…うん。

ありがとう、李優。覚悟…決めてくれて。

それじゃ、萌音も頑張るよ。