神に選ばれなかった者達 後編

しかし、李優が。

「ちょっと待て、萌音。それ…鍵じゃないのか?」

と言った。

「え?」

萌音は、くノ一の手を踏みつける足を止めた。

くノ一の砕けた手には、金色の小さなヘアピンっぽいもの。

…これ、毒か何かだと思ってたけど、違うの?

え?これが鍵?

「こんな小さい鍵があるの?」

「さぁ…知らないけど…。南京錠の鍵穴、これ、見てみろよ」

李優が、南京錠の鍵穴を萌音に見せてくれた。

わー。凄い細くてちっちゃい。

ほんとだ。これなら、このヘアピン(?)がぴったり入りそう。

「もー…。そういうことなら、先に言ってよ…」

「お前が聞く耳も持たずに踏んだんじゃないか…」

そうだった。ごめんね。

無駄に手、踏み潰しちゃった。

萌音は、くノ一さんの手からヘアピン鍵をもぎ取り。

それを、南京錠の鍵穴に刺してみた。

これで違ってたら、反対の手も踏み潰すことにするよ。

しかし。

カチッと音がして、南京錠が外れた。

「おぉー。李優見て、本物だった」

「あぁ…。やったな」

目的その1、達成。

じゃあ、次はその2だね。

「ほら、まだ終わりじゃないよ。立って」

萌音は、床に伸びて死にかけているくノ一さんを無理矢理立たせた。

「分かってるよね?指紋。指出して」

「…レクテシルユウモ…。ニウトンホハンブジ…」

「だから、何言ってるか分からないんだって。ほら、早くしないと指切り取っちゃうよ」

萌音の脅しが、通じたのか通じてないのか分からないけど。

くノ一さんが、そっと指を出した。

その皮膚は黒っぽくて、くすんだ色をしていた。

普通の人間の皮膚より、何倍も厚くて硬いように見えた。

やっぱりこの人、人間じゃないのかもしれない。

まぁどうでも良いことだね。

エレベーターが動いてくれれば、それで。

くノ一さんが、指でタッチパネルに触れると。

死んだように動かなかったエレベーターが、唐突に息を吹き返した。

「お…。李優、動いたよ」

「あぁ…。良かった」

これで一安心だね。

「響也君達がいるのって、何階だっけ?」

「三階だって、本人達は言ってたが…」

「…どのボタンが三階なのか、李優、分かる?」

「…」

エレベーターの内部には、ボタンがいくつかついていたんだけど。

ボタンに書かれている文字が読めないから、どれを押したら良いのか分からない。

それに何より、気になるのは。

「李優、これ…」

「あぁ…」

ボタンが、5つあることだった。

普通四階建ての建物だったら、エレベーターのボタンも4つのはずだよね?

それなのにこのエレベーター、ボタンが5つある。

…さて、これはどういうことなのかな。