神に選ばれなかった者達 後編

これでも、萌音も考えたんだよ。どうしたら良いか。

響也君とみらくちゃんを助ける為には、まずこのフロアを出なきゃいけない。

そしてこのフロアを出る為には、あの封じられたエレベーターをこじ開けなきゃいけない。

だけどあのエレベーターは、南京錠と、それから指紋認証をクリアしなければ使えない。

ならば、どうするか?

鍵を奪う。これは最初に考えたけど。

鍵を入手しても、指紋認証まではどうにもならない。

…ならば、萌音達が取れる選択肢は一つ。

鍵を開けられるバケモノ忍者を人質に取って、脅して鍵を開けさせる。

これしかないよね。

もしバケモノ忍者が、人質に取られるくらいなら、潔く自決する…なんて高潔な精神を持っていたら、この作戦は上手く行かなかっただろう。

でも、このくノ一さんは、怯えていた。

殺されることに怯え、命乞いをしていた。

これは萌音達にとって、非常に都合の良い状況だった。

「さぁ、来て。君にはやってもらわなきゃいけないことがあるんだよ」

「…カノルレクテシカイイ?」

「なんて言ってるのか分かんないよ。早く」

萌音は、くノ一さんの襟首を掴んで引っ張った。

「くそっ…。危険極まりないが、こうなったら仕方ねぇか…」

李優は頭をガリガリと掻いて、そしてさっき奪った拳銃を、くノ一のこめかみに当てた。

「ッヒ…!」

「悪いが、撃たれたくなければ従ってもらうぞ。意味、分かるよな?」

李優の言葉が通じているのか、通じていないのか分からないが。

くノ一さんの怯えた表情を見れば、抵抗する意志がないのは明白だった。

…無抵抗の女性を人質に取って、無理矢理言うことを聞かせる…。

現実だったらこれ、とんでもない犯罪だね。

でも大丈夫、ここ夢の中だから。何をしてもセーフ。

「…ダリモツクイテレツニコドド?」

「黙って」

どうせ何言ってんのか分かんないよ。

怯えているのは、くノ一さんだけじゃない。

今にもバケモノ忍者の仲間が来て、人質を奪還されるんじゃないかって。

こっちだって、周囲を警戒しなきゃいけないんだ。

ここまで来て人質を奪い返されたら、危ないのはこっちだからね。

萌音が襟首を掴み、李優がこめかみに拳銃を当てたまま。

一行は何とか、無事に例のエレベーターの前にやって来た。

…何とかここまで辿り着けたね。

萌音がエレベーターの前で足を止めると、くノ一さんが息を呑むのが分かった。

「分かるよね?これ」

「…」

萌音は、エレベーターを指差した。

悪いけど言葉分かんないから、ジェスチャーだけで理解してもらうよ。

「このエレベーター、使えるようにして」

ちょいちょい、と再度エレベーターを指差す。

…これで分かっただろうか?