神に選ばれなかった者達 後編

…結局その日は、放課後にそんな騒動があったせいで。

二人で作戦会議、は出来なかったのだけど。

でも、作戦会議をする必要などなかった。

萌音は、もう「作戦」を考えていたから。






…夢の中にて。

「李優」

「萌音…」

いつも通り、萌音は李優と合流した。

李優も李優なりに考えていたようで、萌音と合流するなり真っ先に言った。

「萌音。俺も色々考えたんだが、とりあえず現在位置の確認を、」

「ううん、大丈夫」

「…は?何が?」

大丈夫って言ったら大丈夫なんだよ。

大丈夫にしてみせる。…萌音が。

「萌音に任せて」

「え、ちょ…!」

萌音は、李優を置いて一人で走り出した。

萌音のやるべきことは決まっている。

迷ってる時間が惜しいし、考えてる時間も惜しい。

一回や二回死んだところで、大した痛手にはならない。

多少現実は「侵食」されるだろうけど。

その程度、生まれた時から悪夢の中に生きている萌音にとっては、日常茶飯事。

軽いそよ風みたいなものだ。

今まで何度も死んだきたんだから、これから一回や二回死んだって、それが何だと言うのか。

行動を起こさず、物陰で震えているより余程マシだ。

だから、萌音は走った。

焼却炉に向かって。

焼却炉付近では、バケモノ忍者達が、スコップ片手に死体を焼却炉に放り込んでいた。

その数、僅かに二人。

二人くらいなら、奇襲すれば倒せる。

萌音は、その二人のうち一人に、渾身のタックルを食らわせた。
 
「ッワグ…!!」

「ダノモニナ!?」

忍者さんがなんか言ってるけど、気にしない気にしない。

どうせなんて言ってるか分からないし。

タックルで床に引き倒すと共に、その手からスコップを奪い取った。

そして、そのスコップで脳天を思いっきりぶん殴った。

ガツン!!と良い手応えがして、一瞬にして昏倒。

忍者みたいな格好してる割には、反応が鈍いみたいだね。

すると。

「ナクゴウヲコソソ!」

もう一人残っていたバケモノ忍者が、例の拳銃をこちらに向けた。

やると思ってたよ、それ。

なんて言ってるのか分からないけど、でもその声音から、突然の奇襲に怯えているのは分かった。

これは萌音にとって、大変都合の良いことだ。

基本的に、この悪夢の中では、萌音達人間より、バケモノの方が強い。

だから、バケモノは萌音達を前にして怯えないし、むしろ怯えるこちらを攻撃してくる。

だけど、こいつらは逆だ。

こいつらはバケモノだけど、確かに強力な武器を持っているけれど。

身体能力は、これまでのバケモノほどじゃない。

ましてや、怯えている敵なんて、萌音の敵じゃなかった。