神に選ばれなかった者達 後編

萌音は昔から、ずっとそうだったな。

いくら人に優しくされても、優しさを教えてもらっても。

他人に優しくするってことが出来ないの。

もとはと言えば全部…。そのせいで…。パパとママも…。

「萌音、多分みらくちゃんに嫌われちゃってるよね…」

「…萌音…」

なんて冷たいこと言う子なんだろう、って思っただろうね。

あの萌音ちゃんって子は嫌な子だって、意地悪な子だって、きっとそう思ったよね。

分かってるよ。

だけど、萌音にはそれが出来ない。

他人が当たり前のように持っている優しさを、他人に向けることが出来ない。

もしかしたら萌音は、人間として何か大事なものが欠けているのかもしれない。

「萌音は嫌な子だ」

他人に優しくしなければ、自分も優しくしてもらえなくなる。

誰にも優しくしてもらえない人間は、いずれ一人ぼっちになる…。

嫌と言うほど聞かされた言葉を、萌音は再び思い出して。

そして、酷く苦しい気持ちになった。

…しかし。

「…萌音は嫌な子なんかじゃない」

李優は、きっぱりとそう言った。

「…李優…?」

「萌音は嫌な子なんかじゃねぇよ…。人に優しくするばかりが、甘やかしてやるばかりが優しさじゃない。時には厳しいことを言うのも優しさだ」

「…」

時には…って、李優は言うけど。

萌音はいつも、厳しいことしか言ってない気がする。

「それにな、萌音が優しくないなんて、俺は思ったことないぞ。お前は優しい女の子だ」

「…本当にそう思うの?」

「お世辞で嘘は言わねぇよ…。大体、本当に優しくない人間は、『自分は優しくない』なんて言わないだろ」

…そうなのかな。

自覚があるだけマシ、ってこと?

「萌音は優しいよ。ただ、お前はちょっと不器用なだけだ。優しさの伝え方が難しいだけだ。優しくないなんてことはない」

「…そうかな」

「そうだよ。だから堂々としてれば良いんだ。俺はいつも通り、普段通りの萌音が好きだよ」

…そっか。

「ありがと、李優…。萌音も李優のこと好きだよ」

「お、おう…」

「…凄く好き。いっぱい好き。好きが爆発するくらい好き…」

「わ、分かった、分かったから。あんまむず痒いこと言うなって…」

言うよ。

だって、李優は萌音を選んでくれた。

こんなどうしようもない萌音と、ずっと一緒にいてくれた。

実の両親でさえ、萌音とは一緒にいられないって言ったのに。

だから萌音は、李優の為に頑張ろう。

李優が喜んでくれるように、李優を助けられるように、萌音に出来ることをする。