神に選ばれなかった者達 後編

李優は、コアラみたいにくっついてる萌音を見下ろした。

「俺には萌音がいるから…。萌音のことが大事だから…。他の人とは付き合えない。ごめん」

「…そう…ですか」

一年生の女の子は、心底残念そうな顔をして。

それから、握っていた李優の手を離した。

「残念です…。凄く…」

「そうか…。…悪かったな」

「佐乱先輩が、どうしてもその人が良いなら…仕方ないです。諦めます…」

「そうしてくれると助かる」

切実。

あと、萌音もそうしてくれると助かる。

だけど、去り際に。

「でも…その人、あんまり佐乱先輩に似つかわしくないと思いますよ」

と、捨て台詞みたいに言った。

「…」

思いもよらぬ不意打ちに、李優は無言で、萌音も無言。

「…それじゃ、失礼します…」

言いたいことを言いたいだけ言って、そそくさと去る女の子。

…やっとどっかに行ってくれた。

「萌音だけの李優…。萌音だけのだもん…」

「分かった、分かったから…。もう離れろって」

「…やだもん」

「…我儘かよ…」

我儘だもん。

だって李優のこと離したら、またあの女の子が戻ってきて取ってっちゃうかもしれないでしょ?

そんなのやだもん。

「はいはい。心配しなくても、俺は何処にも行かないよ」

「…ほんと?萌音を置いてけぼりにしたりしない?」

「こんなに手のかかる恋人を、一人で置いていけるかよ。良い子だから離れてくれ。な?こんなところ人に見られたら困る」

「…」

…渋々。

渋々、萌音は李優から離れた。

おっきな抱き枕みたいで、抱き心地良かったんだけどなぁ。

「ったく、やれやれ…」

「…嫌いになった?萌音のこと…」

「なる訳ないだろ?こんなことくらいで。何年一緒に居ると思ってんだ」

「…」

いっぱい一緒に居るね。

現実でも、夢の中でも…。

いつだって、李優は萌音のことを助けてくれた。

萌音のことだけじゃない。仲間のみんなのことも。

だから萌音は、そんな李優が好き。

萌音にはない優しさを、いっぱい、たくさん持ってるから。

そんな李優に比べて、萌音は…。

「作戦会議するつもりが、すっかりそんな時間なくなっちまったな…」

「…しょぼーん」

「…何落ち込んでんだよ?どうしたんだ。情緒不安定だな今日は」

うん。

「だって…萌音、悪い子だった…」

「…は?」

「また優しく出来なかったよ…」

李優の優しさに比べると、あまりの落差に落ち込んでしまう。

「…一体何のことだよ?」

「李優、萌音って意地悪だと思う?優しくないと思う?」

「…どうしたんだ、一体」

昨日の『処刑場』でも、萌音はみらくちゃんに優しい言葉をかけてあげられなかった。

李優はみらくちゃんを助けようとしてたのに、萌音はみらくちゃんを追い詰めるだけで。

もしかして、また…凄く意地悪なことをしちゃったんだろうか。