神に選ばれなかった者達 後編

気がつくと、萌音は物陰から飛び出していた。

「え、萌音…!?」

飛び出してきた萌音を見て、李優はびっくりしていた。

萌音がここに隠れてたこと、気づいてなかったんだね。

盗み聞きしてごめんね。

でも、どうしても我慢出来なかった。

萌音は、ぎゅっ、と李優の腰の辺りに手を回して抱きついた。

「えっ…!?」

「…」

そして、李優の胸元にすっぽりと顔を埋めた。

ホールド、完了。

よし。これ萌音の。

「ちょ、何やってんだよ…!?」

「な、何なんですかあなたっ…?」

李優も、李優の手を握っていた女の子も、突然現れた萌音にびっくり。

だけど、萌音は離れるつもりはなかった。

一回抱きついたら離れない。

コアラみたいにくっついていた。

「萌音の」

と、萌音は一言言った。

「これ、萌音の」

「…俺はモノ扱いなのか?」

「萌音のだもん…」

ぎゅー、っとしがみつく。

この光景、他の人に見られて無くて良かった。

多分、相当奇っ怪な光景に見えていたに違いない。

「あなた…もしかして、佐乱先輩の彼女さん…?」

「萌音の〜…」

壊れたラジオみたいに、同じことしか言わない。

「ちょ、萌音。離れろって」

李優が、萌音を引き剥がそうとしたけれど。

萌音はますます力を入れて、強く抱きついた。

抱きついたって言うか、しがみついていた。

「…やだもん…」

「我儘かよ」

我儘でも良いもん。

だって離れたら、李優がこの子に取られちゃうかもしれないと思って。

李優を好きな人同士、友達みたいに仲良くなれるかもしれない、って思ったけど。

無理だった。

何故だか分からないけど、この子が李優の手を握ってるのを見て、我慢出来なくなった。

「李優は萌音のだもん…。他の子にはあげないもん…」

そして、子供みたいな駄々をこねる。

だって萌音は、小さい頃から、何一つ独占出来なかった。

玩具も、居場所も、親の愛でさえも。

萌音には李優しかいないんだもん。

萌音の一番大好きな李優くらい、萌音だけのものにしても、良いでしょ?

「あっち行って」

「えっ」

萌音は、しっ、とその子を追い払った。

半ば無理矢理、李優とその子を引き離した。

そして、ますます強く李優にしがみついた。

「萌音だけの李優なんだもん…」

「…あのなぁ、お前…」

李優は呆れたような声を出したが。

「…はー…」

諦めたように、溜め息を一つつき。

「ごめんな。ご覧の通りなんだ」

と、ぽかんとしている一年生の女の子に向かって言った。